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不登校・行き渋りの子どもがいる親へのインタビュー調査
サイボウズ株式会社
不登校の初期段階 親には3タイプの葛藤 学校対応と夫婦間の価値観の擦り合わせが改善の鍵に

不登校の初期段階 親には「3タイプの葛藤」
サイボウズ株式会社(本社:東京都中央区、代表取締役社長:青野慶久、以下サイボウズ)の「ソーシャルデザインラボ」は、さまざまな価値観を持つ人々が安心して暮らせる社会を目指し、サイボウズ流のチームワークに基づいた社会実験(育苗実験)を行っています。今回は、不登校・行き渋りの子どもがいる親を対象にインタビュー調査を実施しました。
[調査概要]
◆調査目的:不登校や行き渋りの実態を個別に把握することで、
親が求める支援や社会全体で考えるべき課題を探る。
◆調査対象:過去または現在、不登校や行き渋りのある小中学生の親男女 計6人
【内訳】男性:2人 / 女性:4人
*割付条件:親の属性において男女別、地域別(大都市圏/地方)
子どもの属性において小学生・中学生別で割付
◆調査期間:2025年2月4日(火)~2025年2月12日(水)
◆調査方法:オンライン会議システムを使ったインタビュー調査
▼ソーシャルデザインラボサイト 掲載ページ
https://cybozu.co.jp/sodelab/news/2025/03/12-95.html
フリースクール「サイボウズの楽校」の運営等、子どもたちの支援を行うサイボウズ ソーシャルデザインラボでは、全国で過去最多を更新し続ける不登校児童・生徒の増加について親が抱える課題や、求める支援について調査を実施しています。
昨年秋には、不登校や行き渋りの子どもがいる親1,000人を対象にアンケート調査を実施。今回は前回の結果を踏まえ、子どもの不登校や行き渋りを経験した親6人にお話をうかがいました。
不登校や行き渋りという状態に直面した際、どのように行動し、どんな助けを必要としていたかを調査しました。いまや学校と家庭だけにとどまらない不登校問題に対し、企業、自治体、教育機関、そして社会全体が取り組むことができる支援の糸口を探りました。
《 調査結果のサマリ 》
- 不登校や行き渋りの子どもがいる親1,000人への調査から、不登校には3つのフェーズ、親の葛藤には3つのタイプがあることが見えた。
- 配偶者(パートナー)との価値観の擦り合わせが葛藤を乗り越えるきっかけに。また、親にとって勤務先の理解や柔軟な働き方は精神的な負担減につながる。
- 半数以上のケースで習い事や部活動、スポーツチームなどが子どもを外の世界へつなげるきっかけに。
- 最初の相談先は「学校」が最多。学校の対応については評価が分かれ、迅速で適切な対話ができた場合、状況が好転しやすい。
- 多様な進路選択への許容度は高め。不登校の子どもにとって「通信制高校」は検討しやすい選択肢となっている。
不登校や行き渋りの子どもがいる親1,000人への調査から不登校には3つのフェーズ、親の葛藤には3つのタイプがあることが見えた
昨年12月に公表した「不登校や行き渋りの子どもがいる親1,000人への調査」の結果から、不登校・行き渋りが始まった後、親の行動や心情は大きく分けて3つの経過を辿ることがわかりました【図表1】。

図表1
最初の「フェーズ1」は、親として不登校や行き渋りに困惑しながらも、子どもの状況把握や家庭内のコミュニケーションの難しさに葛藤する期間。次に「フェーズ2」として、通っている学校の先生と話し合ったり新たな居場所を検討したりするなど具体的な情報収集を行う期間。最後は新たな居場所に通い始めるなど次の段階に移行する「フェーズ3」です。
フリースクールや学びの多様化学校の増加により、フェーズ3にまつわる情報は増えていますが、それ以前の段階、とりわけフェーズ1ではまだまだ情報が不足しています。不登校の状況に直面し、対応策を見つけられず困惑してしまう親は少なくありません。
また、特にフェーズ1で親が抱える葛藤には、大きく分けて以下の3つの傾向があることがわかりました【図表2】。

図表2
Aは「なぜ不登校や行き渋りになったのか」理由を知りたいと思いながらも、落ち込んでいる子どもの心情に寄り添った安心できる選択肢を見つけられず抱える葛藤。Bは、子どもの意思や特性を尊重したいと思いつつ、親自身が「学校に行くべきだ」などの考えを持っており、対応を模索する中で生じる葛藤、Cは配偶者(パートナー)・身内との意見の対立に悩む一方、支援不足により孤立を感じ生まれる葛藤です。
多くの親が複数のパターンを経験しており、悩みが複合的であることから不安や焦りを強く感じていることもわかりました。
配偶者(パートナー)との価値観の擦り合わせが葛藤を乗り越えるきっかけにまた、親にとって勤務先の理解や柔軟な働き方は精神的な負担減につながる
前回の調査の結果では、最も頼りたい人として半数以上が「配偶者(パートナー)」と回答しました。今回のインタビューの結果からも、配偶者(パートナー)との関係が葛藤を強めたり、乗り越えるきっかけになったりしていることがわかりました。
特に配偶者(パートナー)との考えや価値観が大きく異なる場合は、今後の方向性が定まらず次のステップに進むまでに時間を要します。
それによる家庭内の不和が生じると、子どもがさらに学校に行きたがらなくなったり、自分の気持ちを話すことに躊躇したりするケースも見られました。配偶者(パートナー)間、さらには親子間での言い争いが重なると、子どもも親もストレスを抱えてしまいます。
一方で配偶者(パートナー)と話し合いができ、足並みを揃えて対応できたケースでは、以下のような声が聞かれました。
「夫の弟が不登校経験していて、身近に感じて知っているので『行きたくないんだったら無理に行かせる方が嫌な思いが募るよ』って何度も説得され、『やってみるか。行かなくていいっていう言葉を信じてやってみよう』って思った。一番きつかったのが、『学校には行かなくてはならない』という自分の固定観念だったので、そこを抜け出せた瞬間から、やっぱり子どもを応援しよう、どんなことであっても応援したいと思えるようになった。」(40代・女性)
「夫婦間の方針は『別に行きたくなかったら行かなくていいんじゃない?』っていう感じで合っていたし、両親(子どもにとっての祖父母)も『なんで行かないの?』とかは言わなかった。心配したし、ストレスが溜まっていた部分はあるけど、特別大きな心境の変化はなかった。」(40代・女性)
不登校や行き渋りが始まるとどうしても子どもに目がいきがちですが、まず配偶者(パートナー)間で話し合っておくことが重要です。親自身の精神的負担を軽減した上で子どもに向き合える環境を作ることが、状況変化のきっかけになるかもしれません【図表3】。

図表3
また配偶者(パートナー)間の関係が悪化する原因の1つとして、それぞれの負担の偏りが挙げられます。特に働く親の間では「子どもが家にいる間の仕事をどうするか」が大きな課題となっていました。
在宅勤務を選択しやすく職場の理解が得やすいケースでは、働き方に大きな変化はなく重い負担を感じていなかった一方、出社が当たり前になっていたり、職場に理解者が少ないと感じていたりするケースでは、仕事と家庭の両立が深刻な悩みとなっていました。
「在宅もできるが、やっぱり白い目で見られる。会社での立場がどんどんなくなっていくし、『なんで俺にばかり負担がかかるんだ』と妻と言い争いになってしまう。その喧嘩でさらに子どもは『もう行きたくない』となってしまう。だったらもう(仕事を)辞めた方がいいんじゃないかと思うことがある。」(50代・男性)
不登校のみならず、子育てや介護など様々な事情で仕事との両立に悩む人は後をたちません。
人手不足が深刻化する今、働きたい人たちが仕事を諦めなくて済むよう、職場で理解し合える環境や、柔軟な働き方を実現できる制度を作ることが企業や社会には求められます。
半数以上のケースで 習い事や部活動、スポーツチームなどが子どもを外の世界へつなげるきっかけに
不登校や行き渋りになった子どもにとって、習い事や部活動、スポーツチームなどが心の拠り所となっていることがわかりました。半数以上のケースで、「学校には行かなかったが、習い事には通い続けていた」「部活動のある日は学校に行く」などの経験が寄せられました【図表4】。

図表4
中には「習い事でできた交友関係がきっかけで学校に通い出した」と話す人もいました。
なお、習い事や部活動、スポーツチームなどには不登校や行き渋りになる前から通っていたケースがほとんどでした。安心できる慣れ親しんだ環境を作っておくことが、子どもの心の安定につながると考えられます。
最初の相談先は「学校」が最多学校の対応については評価が分かれ、迅速で適切な対話ができた場合、状況が好転しやすい
不登校や行き渋りに直面した親がまず相談する先は、多くの例において「学校」でした。
担任の先生だけでなく、副校長や養護教諭に相談した例もあります。
この学校への相談については評価が分かれ、「親身になって対応してくれた」と答えた方もいれば、「一辺倒な対応しかされなかった」と答えた方もいました。
加えて、インタビューの結果から、最初の相談先である学校での対応が状況変化に影響を及ぼすこともわかりました。
学校での相談がうまくいかない場合、地域(自治体)、民間の相談機関へと助けを求めた親もいます。相談相手が見つけられないことでなかなか支援につながらず、試行錯誤に多くの時間を費やしてしまうケースもあります【図表5】。

図表5
また、不登校や行き渋りの子どもへの対応も学校によって異なることがわかりました。
同じ東京都内でも、オンラインで授業を受けられ出席扱いになる学校がある一方、そのような仕組みがない学校もあるとのことです。
特に中学生では、進路選択に必要な「出席」を気にする親も少なくありません。学校や地域により対応が異なると親は自分に該当する情報を個別に探さなければならず、「どこに聞けばいいかわからない」という状況につながっている可能性が考えられます。
多様な進路選択への許容度は高め不登校の子どもにとって「通信制高校」は検討しやすい選択肢となっている
特に中学生において、進学への影響に気を揉む親の声が聞かれました。
不登校や行き渋りにより出席日数が足りない場合、進路選択に関わる評価が悪くなるのではと悩む傾向にあります。
中学生の親2人の中で、進路の選択肢として挙がったのが「通信制高校」です。通信制高校は毎日登校する必要がないため、学校に行きにくい子どもたちには身近で現実的な選択肢となっています。
今回お話をうかがった6人のうち多くは進路選択の許容度が高く、中には子どもからの「通信制高校に通いたい」と希望があり、進学を決めたケースもありました。
■ まとめ
今回6人の親にインタビューを実施した結果、不登校や行き渋りの理由・親子間の関係性はさまざまで、一括りにして対応策を考えることはできないと痛感しました。
一方で、不登校や行き渋りという状況になった際、多くの親や子どもに見られる傾向はいくつか浮かび上がりました。
一つは、学校に通わなくなったきっかけです。「体調不良」が挙げられることが多く、6人中5人が行きたくない理由の1つに「人間関係(特に友達関係)」を挙げていました。
二つ目は、不登校や行き渋りが始まると親が最初に頼るのは「学校」が多いということです。この学校での相談がうまくいかない場合は「地域(自治体)」、続いて「民間の相談機関」に助けを求めています。
最初の相談先である「学校」で迅速に適切な支援につながることができれば、不登校に悩む親子は早めにそれぞれの葛藤から脱出することができるようになるかもしれません。
また不登校に限らず、仕事をしたい人が離職せざるを得ない状況に追い込まれないよう、働き方の柔軟性や職場で理解し合える環境を作っていくことが社会で生きる私たち一人ひとりに求められます。
今回のインタビューで寄せられた経験談は、サイボウズ ソーシャルデザインラボの Web サイトにて掲載します。順次6人分のエピソードを公開予定です。
https://cybozu.co.jp/sodelab/news/2025/03/12-99.html
エピソードをもとにした漫画も制作し、フェーズ1の段階にある親の支援に取り組んでいきます。順次ご案内いたしますので、ぜひご覧ください。
■ 「サイボウズの楽校」について
サイボウズの楽校は、チームワークを大切にし、「仲間と一緒にしあわせに生きる力」を育むフリースクール(オルタナティブスクール)です。東京・吉祥寺で、小学2年生~6年生を対象に授業を行っています。学習指導要領を元に作成したカリキュラムとサイボウズの楽校独自の内容を組み合わせ、子どもたちの個性に合わせた学びを実践しています。「楽しい学校、楽しい勉強を目指す学び場を、私たちがつくってみたい」という思いから生まれました。
サイボウズのクラウドサービス「kintone(キントーン)」を活用し 、親や子どもとスタッフが密にコミュニケーションをとれる環境づくりにも取り組んでいます。詳細や体験の希望は以下のサイトをご覧ください。
https://cybozu.co.jp/gakkou/
■ サイボウズ ソーシャルデザインラボについて
私たちソーシャルデザインラボは「チームワークあふれる社会づくり」という目的のもと、サイボウズ流のチームワークによって多様な価値観の人が安心して暮らすための社会実験(育苗実験)を行っています。災害時の支援や地方創生、虐待防止や子どもの不登校など、多様な社会問題をチームで解決するモデル創りに取り組んでいます。育苗実験を多くの人々に共感をしてもらい、政府や行政機関に政策のエビデンスとして利用してもらうことで社会課題の解決を目指していきます。
https://cybozu.co.jp/sodelab/
※引用について:
本調査の結果を引用いただく際には、出所の明示をお願いいたします。
例)サイボウズ ソーシャルデザインラボ「不登校・行き渋りに関するインタビュー調査」
※記載された商品名、各製品名は各社の登録商標または商標です。また、当社製品には他社の著作物が含まれていることがあります。個別の商標・著作物に関する注記については、こちらをご参照ください。
http://cybozu.co.jp/company/copyright/other_companies_trademark.html
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不登校の初期段階 親には3タイプの葛藤 学校対応と夫婦間の価値観の擦り合わせが改善の鍵に

不登校の初期段階 親には「3タイプの葛藤」
サイボウズ株式会社(本社:東京都中央区、代表取締役社長:青野慶久、以下サイボウズ)の「ソーシャルデザインラボ」は、さまざまな価値観を持つ人々が安心して暮らせる社会を目指し、サイボウズ流のチームワークに基づいた社会実験(育苗実験)を行っています。今回は、不登校・行き渋りの子どもがいる親を対象にインタビュー調査を実施しました。
[調査概要]
◆調査目的:不登校や行き渋りの実態を個別に把握することで、
親が求める支援や社会全体で考えるべき課題を探る。
◆調査対象:過去または現在、不登校や行き渋りのある小中学生の親男女 計6人
【内訳】男性:2人 / 女性:4人
*割付条件:親の属性において男女別、地域別(大都市圏/地方)
子どもの属性において小学生・中学生別で割付
◆調査期間:2025年2月4日(火)~2025年2月12日(水)
◆調査方法:オンライン会議システムを使ったインタビュー調査
▼ソーシャルデザインラボサイト 掲載ページ
https://cybozu.co.jp/sodelab/news/2025/03/12-95.html
フリースクール「サイボウズの楽校」の運営等、子どもたちの支援を行うサイボウズ ソーシャルデザインラボでは、全国で過去最多を更新し続ける不登校児童・生徒の増加について親が抱える課題や、求める支援について調査を実施しています。
昨年秋には、不登校や行き渋りの子どもがいる親1,000人を対象にアンケート調査を実施。今回は前回の結果を踏まえ、子どもの不登校や行き渋りを経験した親6人にお話をうかがいました。
不登校や行き渋りという状態に直面した際、どのように行動し、どんな助けを必要としていたかを調査しました。いまや学校と家庭だけにとどまらない不登校問題に対し、企業、自治体、教育機関、そして社会全体が取り組むことができる支援の糸口を探りました。
《 調査結果のサマリ 》
- 不登校や行き渋りの子どもがいる親1,000人への調査から、不登校には3つのフェーズ、親の葛藤には3つのタイプがあることが見えた。
- 配偶者(パートナー)との価値観の擦り合わせが葛藤を乗り越えるきっかけに。また、親にとって勤務先の理解や柔軟な働き方は精神的な負担減につながる。
- 半数以上のケースで習い事や部活動、スポーツチームなどが子どもを外の世界へつなげるきっかけに。
- 最初の相談先は「学校」が最多。学校の対応については評価が分かれ、迅速で適切な対話ができた場合、状況が好転しやすい。
- 多様な進路選択への許容度は高め。不登校の子どもにとって「通信制高校」は検討しやすい選択肢となっている。
不登校や行き渋りの子どもがいる親1,000人への調査から不登校には3つのフェーズ、親の葛藤には3つのタイプがあることが見えた
昨年12月に公表した「不登校や行き渋りの子どもがいる親1,000人への調査」の結果から、不登校・行き渋りが始まった後、親の行動や心情は大きく分けて3つの経過を辿ることがわかりました【図表1】。

図表1
最初の「フェーズ1」は、親として不登校や行き渋りに困惑しながらも、子どもの状況把握や家庭内のコミュニケーションの難しさに葛藤する期間。次に「フェーズ2」として、通っている学校の先生と話し合ったり新たな居場所を検討したりするなど具体的な情報収集を行う期間。最後は新たな居場所に通い始めるなど次の段階に移行する「フェーズ3」です。
フリースクールや学びの多様化学校の増加により、フェーズ3にまつわる情報は増えていますが、それ以前の段階、とりわけフェーズ1ではまだまだ情報が不足しています。不登校の状況に直面し、対応策を見つけられず困惑してしまう親は少なくありません。
また、特にフェーズ1で親が抱える葛藤には、大きく分けて以下の3つの傾向があることがわかりました【図表2】。

図表2
Aは「なぜ不登校や行き渋りになったのか」理由を知りたいと思いながらも、落ち込んでいる子どもの心情に寄り添った安心できる選択肢を見つけられず抱える葛藤。Bは、子どもの意思や特性を尊重したいと思いつつ、親自身が「学校に行くべきだ」などの考えを持っており、対応を模索する中で生じる葛藤、Cは配偶者(パートナー)・身内との意見の対立に悩む一方、支援不足により孤立を感じ生まれる葛藤です。
多くの親が複数のパターンを経験しており、悩みが複合的であることから不安や焦りを強く感じていることもわかりました。
配偶者(パートナー)との価値観の擦り合わせが葛藤を乗り越えるきっかけにまた、親にとって勤務先の理解や柔軟な働き方は精神的な負担減につながる
前回の調査の結果では、最も頼りたい人として半数以上が「配偶者(パートナー)」と回答しました。今回のインタビューの結果からも、配偶者(パートナー)との関係が葛藤を強めたり、乗り越えるきっかけになったりしていることがわかりました。
特に配偶者(パートナー)との考えや価値観が大きく異なる場合は、今後の方向性が定まらず次のステップに進むまでに時間を要します。
それによる家庭内の不和が生じると、子どもがさらに学校に行きたがらなくなったり、自分の気持ちを話すことに躊躇したりするケースも見られました。配偶者(パートナー)間、さらには親子間での言い争いが重なると、子どもも親もストレスを抱えてしまいます。
一方で配偶者(パートナー)と話し合いができ、足並みを揃えて対応できたケースでは、以下のような声が聞かれました。
「夫の弟が不登校経験していて、身近に感じて知っているので『行きたくないんだったら無理に行かせる方が嫌な思いが募るよ』って何度も説得され、『やってみるか。行かなくていいっていう言葉を信じてやってみよう』って思った。一番きつかったのが、『学校には行かなくてはならない』という自分の固定観念だったので、そこを抜け出せた瞬間から、やっぱり子どもを応援しよう、どんなことであっても応援したいと思えるようになった。」(40代・女性)
「夫婦間の方針は『別に行きたくなかったら行かなくていいんじゃない?』っていう感じで合っていたし、両親(子どもにとっての祖父母)も『なんで行かないの?』とかは言わなかった。心配したし、ストレスが溜まっていた部分はあるけど、特別大きな心境の変化はなかった。」(40代・女性)
不登校や行き渋りが始まるとどうしても子どもに目がいきがちですが、まず配偶者(パートナー)間で話し合っておくことが重要です。親自身の精神的負担を軽減した上で子どもに向き合える環境を作ることが、状況変化のきっかけになるかもしれません【図表3】。

図表3
また配偶者(パートナー)間の関係が悪化する原因の1つとして、それぞれの負担の偏りが挙げられます。特に働く親の間では「子どもが家にいる間の仕事をどうするか」が大きな課題となっていました。
在宅勤務を選択しやすく職場の理解が得やすいケースでは、働き方に大きな変化はなく重い負担を感じていなかった一方、出社が当たり前になっていたり、職場に理解者が少ないと感じていたりするケースでは、仕事と家庭の両立が深刻な悩みとなっていました。
「在宅もできるが、やっぱり白い目で見られる。会社での立場がどんどんなくなっていくし、『なんで俺にばかり負担がかかるんだ』と妻と言い争いになってしまう。その喧嘩でさらに子どもは『もう行きたくない』となってしまう。だったらもう(仕事を)辞めた方がいいんじゃないかと思うことがある。」(50代・男性)
不登校のみならず、子育てや介護など様々な事情で仕事との両立に悩む人は後をたちません。
人手不足が深刻化する今、働きたい人たちが仕事を諦めなくて済むよう、職場で理解し合える環境や、柔軟な働き方を実現できる制度を作ることが企業や社会には求められます。
半数以上のケースで 習い事や部活動、スポーツチームなどが子どもを外の世界へつなげるきっかけに
不登校や行き渋りになった子どもにとって、習い事や部活動、スポーツチームなどが心の拠り所となっていることがわかりました。半数以上のケースで、「学校には行かなかったが、習い事には通い続けていた」「部活動のある日は学校に行く」などの経験が寄せられました【図表4】。

図表4
中には「習い事でできた交友関係がきっかけで学校に通い出した」と話す人もいました。
なお、習い事や部活動、スポーツチームなどには不登校や行き渋りになる前から通っていたケースがほとんどでした。安心できる慣れ親しんだ環境を作っておくことが、子どもの心の安定につながると考えられます。
最初の相談先は「学校」が最多学校の対応については評価が分かれ、迅速で適切な対話ができた場合、状況が好転しやすい
不登校や行き渋りに直面した親がまず相談する先は、多くの例において「学校」でした。
担任の先生だけでなく、副校長や養護教諭に相談した例もあります。
この学校への相談については評価が分かれ、「親身になって対応してくれた」と答えた方もいれば、「一辺倒な対応しかされなかった」と答えた方もいました。
加えて、インタビューの結果から、最初の相談先である学校での対応が状況変化に影響を及ぼすこともわかりました。
学校での相談がうまくいかない場合、地域(自治体)、民間の相談機関へと助けを求めた親もいます。相談相手が見つけられないことでなかなか支援につながらず、試行錯誤に多くの時間を費やしてしまうケースもあります【図表5】。

図表5
また、不登校や行き渋りの子どもへの対応も学校によって異なることがわかりました。
同じ東京都内でも、オンラインで授業を受けられ出席扱いになる学校がある一方、そのような仕組みがない学校もあるとのことです。
特に中学生では、進路選択に必要な「出席」を気にする親も少なくありません。学校や地域により対応が異なると親は自分に該当する情報を個別に探さなければならず、「どこに聞けばいいかわからない」という状況につながっている可能性が考えられます。
多様な進路選択への許容度は高め不登校の子どもにとって「通信制高校」は検討しやすい選択肢となっている
特に中学生において、進学への影響に気を揉む親の声が聞かれました。
不登校や行き渋りにより出席日数が足りない場合、進路選択に関わる評価が悪くなるのではと悩む傾向にあります。
中学生の親2人の中で、進路の選択肢として挙がったのが「通信制高校」です。通信制高校は毎日登校する必要がないため、学校に行きにくい子どもたちには身近で現実的な選択肢となっています。
今回お話をうかがった6人のうち多くは進路選択の許容度が高く、中には子どもからの「通信制高校に通いたい」と希望があり、進学を決めたケースもありました。
■ まとめ
今回6人の親にインタビューを実施した結果、不登校や行き渋りの理由・親子間の関係性はさまざまで、一括りにして対応策を考えることはできないと痛感しました。
一方で、不登校や行き渋りという状況になった際、多くの親や子どもに見られる傾向はいくつか浮かび上がりました。
一つは、学校に通わなくなったきっかけです。「体調不良」が挙げられることが多く、6人中5人が行きたくない理由の1つに「人間関係(特に友達関係)」を挙げていました。
二つ目は、不登校や行き渋りが始まると親が最初に頼るのは「学校」が多いということです。この学校での相談がうまくいかない場合は「地域(自治体)」、続いて「民間の相談機関」に助けを求めています。
最初の相談先である「学校」で迅速に適切な支援につながることができれば、不登校に悩む親子は早めにそれぞれの葛藤から脱出することができるようになるかもしれません。
また不登校に限らず、仕事をしたい人が離職せざるを得ない状況に追い込まれないよう、働き方の柔軟性や職場で理解し合える環境を作っていくことが社会で生きる私たち一人ひとりに求められます。
今回のインタビューで寄せられた経験談は、サイボウズ ソーシャルデザインラボの Web サイトにて掲載します。順次6人分のエピソードを公開予定です。
https://cybozu.co.jp/sodelab/news/2025/03/12-99.html
エピソードをもとにした漫画も制作し、フェーズ1の段階にある親の支援に取り組んでいきます。順次ご案内いたしますので、ぜひご覧ください。
■ 「サイボウズの楽校」について
サイボウズの楽校は、チームワークを大切にし、「仲間と一緒にしあわせに生きる力」を育むフリースクール(オルタナティブスクール)です。東京・吉祥寺で、小学2年生~6年生を対象に授業を行っています。学習指導要領を元に作成したカリキュラムとサイボウズの楽校独自の内容を組み合わせ、子どもたちの個性に合わせた学びを実践しています。「楽しい学校、楽しい勉強を目指す学び場を、私たちがつくってみたい」という思いから生まれました。
サイボウズのクラウドサービス「kintone(キントーン)」を活用し 、親や子どもとスタッフが密にコミュニケーションをとれる環境づくりにも取り組んでいます。詳細や体験の希望は以下のサイトをご覧ください。
https://cybozu.co.jp/gakkou/
■ サイボウズ ソーシャルデザインラボについて
私たちソーシャルデザインラボは「チームワークあふれる社会づくり」という目的のもと、サイボウズ流のチームワークによって多様な価値観の人が安心して暮らすための社会実験(育苗実験)を行っています。災害時の支援や地方創生、虐待防止や子どもの不登校など、多様な社会問題をチームで解決するモデル創りに取り組んでいます。育苗実験を多くの人々に共感をしてもらい、政府や行政機関に政策のエビデンスとして利用してもらうことで社会課題の解決を目指していきます。
https://cybozu.co.jp/sodelab/
※引用について:
本調査の結果を引用いただく際には、出所の明示をお願いいたします。
例)サイボウズ ソーシャルデザインラボ「不登校・行き渋りに関するインタビュー調査」
※記載された商品名、各製品名は各社の登録商標または商標です。また、当社製品には他社の著作物が含まれていることがあります。個別の商標・著作物に関する注記については、こちらをご参照ください。
http://cybozu.co.jp/company/copyright/other_companies_trademark.html
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