偶然の出合い、これからも期待

日本新聞協会と全国の会員新聞・通信・放送社は4月6日からの「春の新聞週間」に合わせ、井上芳雄さん(俳優、歌手)、藤井サチさん(モデル)、三宅香帆さん(文芸評論家)にインタビューし、情報があふれる中での新聞の価値や、日頃の新聞の読み方について聞きました。
―新聞にはどのようなイメージがありますか。
井上 育った実家で朝刊と夕刊を取っていました。(郵便受けに)取りに行くのは子どもの仕事でもあり、新聞は当たり前に身近にあるもの。大学生になって東京に出てからも、これまでと同じく購読するものだと思って読んでいたんですけど、大学生で取っている人は少なかったかなぁ(苦笑)。
―どのような記事を読んでいましたか。
井上 小さい頃はテレビを見ていい時間が決まっていたので、見たい番組の所にマーカーで印を付けて「今日はこれを見ます!」と。(成長して)読める所が少しずつ増えていき、演劇やミュージカルに興味を持って以降は、芸能や文化系の記事を読むようになりました。劇評が載るのが大きかったですね。
―今も購読しているそうですね。忙しいと思いますが、読む時間は確保できていますか。
井上 自宅で朝刊と夕刊を取っていますが、残念ながら読めない日もあって、きれいなまま回収に出すことも…。ただ全部は読めなくても、ちょっとコーヒーを飲んで一息つけるような時に、2、3ページだけでも読むようにしています。ぜいたくな時間になってしまっているかもしれません。
―ご自身が新聞に載る立場になりましたね。
井上 僕が出ている作品の劇評はドキドキしながら見ます。基本的には褒められたいから(笑)。1人の役者に触れる量は少しでも、褒められたらうれしくて心に残り、内容も覚えていますよ。切り抜いて、スクラップブックに全部保存しています。けなされたら落ち込み、のみ込むのに時間がかかりますが、何年かたてば良い思い出です。
書く方も大変ですよね。観劇した作品の内容や背景をくみ取って評価をするには、責任やプレッシャーもあり、勉強もしないといけないと思います。
―新聞の良いところはどこでしょうか。
井上 今はフェイクニュースと呼ばれるものもあって、情報を見極めることが難しい時代です。その中で新聞は公平であろうとしている、と思います。一つの話題について賛否両方の意見を紹介している。もちろん、人間が作っているものだから間違いもあるかもしれないけど、基本的には信頼しています。
新聞は知りたい情報を受け取る場でもありますが、興味がなかったり、触れられなかったりしたものに、偶然触れられる場所でもあると思う。そんな偶然性の出合いがたくさんあったら、うれしいですね。
―活字離れが進む中、新聞に期待することは。
井上 書店にしょっちゅう行けるわけではないので書評欄を見るのも好きです。読んで面白そうと思ったら、すぐにインターネットで買うこともあります。そうやって知る作家さんも結構いるかな。
今は本当に情報が多くて、知りたければネットを使って自分で情報を取りにいけます。一方で、僕たちの演劇も(新聞と似て)アナログですが、そこじゃないと出合えないものがあると信じてやっています。デジタルネーティブの世代に紙の良さは伝わりにくいのかもしれませんが、何年か前に興味がなかったものでも、今は興味を持っている、ということがありますよね。新聞と出合う機会、触れる機会をもっと増やせればいいんじゃないかなと思います。
―最後に、ご家庭での新聞活用法を教えてください。
井上 インタビュー記事や投書欄で感動したものがあったら、そこだけ切り抜いて、妻や子どもに「良かったよ。読んでみて」と勧めています。
わざわざそのページを切り取って渡すので、子どもには「父親はすごく読んでほしいんだ」と伝わるし、子どもも「分かった」と言って読んでくれます。インターネットの記事でも共有はできるけれど、直接紙のやりとりをすることで重みは増すかなぁと思います。
井上芳雄(いのうえ・よしお) 1979年生まれ。福岡県出身。東京芸術大学在学中の2000年にミュージカル「エリザベート」の皇太子ルドルフ役でデビュー。第33回菊田一夫演劇賞、第20回読売演劇大賞優秀男優賞など数々の演劇賞を受賞。ミュージカルや舞台での活動に加え、テレビの音楽・バラエティー番組にも出演している。
この記事は春の新聞週間に合わせて、日本新聞協会の会員新聞・通信・放送社が共同制作したものです。
(共同)