化学メーカーがエビの完全養殖に挑戦

 三洋化成工業が育てるバナメイエビ=京都市
 三洋化成工業が育てるバナメイエビ=京都市


三洋化成工業がエビの陸上での完全養殖に乗り出した。食卓に並ぶエビは海上養殖を主とする東南アジアからの輸入が多く、環境負荷への懸念から国内で生産する事業者が増えている。三洋化成は生物への投与で免疫力を高める効果が期待できる自社の化学素材「ペプチド」の活用を模索。化学メーカーの強みを生かし、事業者向けの稚エビ出荷を目指す。(共同通信=我妻美侑)
寒さがしみる2月下旬、京都市の研究室を訪れると、蒸し暑い部屋に置かれた水槽内で、ペプチドを投与したバナメイエビが育っていた。食用として幅広い料理に使われる種で、三洋化成によると、同じく流通量の多いブラックタイガーより成長が早いという。
低カロリー高タンパクのエビは、健康志向の高まりから世界で市場の拡大を続ける。日本は世界でも上位の消費大国だが、9割を輸入に頼る。近年は海上養殖に伴うマングローブ林の破壊や水質汚染といった環境問題を背景に、持続可能な生産に向け国内での陸上養殖が増えている。
三洋化成は生物の活性化を助ける素材ペプチドを安価で大量に作る技術を持つ。ペプチドはアミノ酸が複数つながったもので、産卵数や幼生の数を増やしたり、病気を防いだりする効果があるとされる。農業分野で活用した知見を踏まえ、2021年10月から新規事業としてエビへの挑戦を始めた。
ペプチドは肥料として国の登録を受けている。エビへの活用に法的な問題がないかを確認する必要があるため、まずはペプチドを使わずに養殖を繰り返した。
孫の代まで卵を産ませて育てる完全養殖は2024年2月に成功させた。バナメイエビは餌の量や水温などに敏感で育てるのが難しい。競合の中には稚エビを輸入して育て、子どもを産ませるまでが限界というところも少なくない。
2024年12月には京都府、大阪府、兵庫県内の小売店で、ペプチドを使わないバナメイエビを試験販売。スーパーで購入できるのは冷凍品が主流のため、活エビの鮮度の良さが好評だったという。
事業化に向けた課題はペプチドを活用した効率的な完全養殖の実現や、採算性の向上だ。担当者は「大量かつ安定的に稚エビを提供するパイオニアとしての地位を確立したい」と語る。
(共同)

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