正倉院の「象牙」はクジラ肋骨

奈良市の正倉院に「象牙」として伝わる宝物が、宮内庁正倉院事務所の調査で、大型クジラの肋骨だったことが9日までに分かった。研究成果はこのほど刊行された正倉院紀要第47号に掲載された。象牙に特徴的な模様の「シュレーゲル線」がなく、骨の大きさなどから体長18メートル程度のヒゲクジラの肋骨の可能性があるという。宝物としての名称は「象牙」のままとする。
正倉院事務所によると、調査された「象牙」は1117年の目録に「象牙」と記録されており、工芸品を作るための材料とみられる。緩やかに湾曲しており、長さ約1・4メートル。太いところで直径約9センチ。
今回の調査で「象牙」には象牙の細管が織りなす模様のシュレーゲル線がなく、表面が一般的な象牙よりもざらついていた。また、内部が海綿状組織であることから、水中に生息していた動物の骨と判断され、大きさから大型クジラの肋骨と結論づけた。明治18(1885)年の正倉院の目録でも象牙ではないと指摘されていたが、その見解は引き継がれなかったという。
(共同)