隔壁なくし保温性高めた革新的な登山用の羽毛寝袋

 「試作品は10回ぐらい作り直しました」と話すモンベルの嘉住哲治さん
 「試作品は10回ぐらい作り直しました」と話すモンベルの嘉住哲治さん


登山用の寝袋は羽毛の偏りによる保温力の低下を防ぐため、内部を隔壁で仕切るのが一般的だ。羽毛が絡みやすい特殊な糸を内部に張り巡らす「スパイダーバッフルシステム」を開発し、隔壁を不要とした。
従来品より保温力が向上し、軽くなった。2020年春の発売以来、登山者の支持は根強く、災害時に備える行政や警察からの受注も増えている。開発者のモンベルの嘉住哲治(かすみ・てつじ)さんにヒットのヒントを聞いた。(共同通信=浜谷栄彦記者)
隔壁を取り除いたことで羽毛が圧迫されにくくなり、暖かい空気の層を保ちやすくなった。「羽毛の暖かさを最大限生かせるシステム。モンベルの代名詞だ」と話す。
現在モンベルが販売する寝袋の5割に採用している。防水仕様のハイエンドモデル「ドライシームレスダウンハガー900」のうち汎用性の高い快適温度5度の商品は571グラム、5万7千円(2025年5月時点)。
開発のきっかけは2018年夏、創業者の辰野勇会長が本社企画部で発した一言だ。「スパイダーヤーンにダウンを絡めたら隔壁は要らないんじゃないか」。スパイダーヤーンは化学繊維で作ったクモの巣状の糸。けばだっていて羽毛が付きやすいという。
試作を重ね、冬場の平日は神戸市の自宅ベランダで新型の寝袋にくるまって睡眠を取った。「秘密保持のため企画部内で手作りした寝袋を工場で大量生産するシステムづくりに苦労した」。嘉住さんは大阪府出身、55歳。
(共同)

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