長嶋茂雄さん、大病後も努力

長嶋茂雄さんが巨人の監督を務めていた1970年代後半から、元スポーツ紙記者川手洋一さん(74)は約半世紀にわたって親交を深めてきた。印象に強く残っているのは、大病を患った後に故郷の千葉県佐倉市での少年野球教室で見せた、スターとしてあり続けようとする壮絶な覚悟と努力を続ける姿だった。
2014年からこれまでに8回開催された「長嶋茂雄少年野球教室」。長嶋さん自身、脳梗塞の後遺症がありながら17年まで講師を務めた。「未来の子どもたちに野球をもっと普及させたいというのは、現役を引退した頃からの夢。体調が悪い時も無理を押して来られていた」と発足や運営に関わってきた川手さんは振り返る。
ある年、長嶋さんはバックネット裏からグラウンドに出る際にわずかな段差を上ることができなかった。「ちきしょう」。つぶやきながらも周囲の手を借りず、何とか一人で上ろうとする姿。かつての国民的スターの衰えではなく、参加した大勢の子どもたちや詰めかけた観客を前に、どんな時でも誰もが憧れる“長嶋茂雄”であり続けようとする意志に見えた。
(共同)