独特の文体、作品語る 芥川賞作家・黒田さん、笠間で講演
昨年1月に芥川賞を史上最年長となる75歳で獲得した作家の黒田夏子さんが9日、笠間市中央の友部公民館で講演会を行った。横書きで平仮名を多用する自らの作品やこれまでの人生にも触れ、「私の本にはメッセージがない。目に見えないものを、言葉によって形にしている。子どものころから書きたかったことをこうして書き、70年続けてきて今がある」と飾らない言葉で述べた。
黒田さんは1937年生まれ。早稲田文学新人賞に輝いた「abさんご」で第148回芥川賞を手にし、同賞の最年長受賞者として注目を集めた。
講演会は笠間市立図書館が主催し、満席となる約240人が来場。黒田さんは、横書きで固有名詞やかぎかっこを使わない独特の文体や、作品の考え方について丁寧な語り口で話した。
文のスタイルは、「文学作品だけがずっと縦書きで、そのしきたりや風習を見直して書いたら一番しっくりきた」。30代半ばから校正の仕事で生計を立てつつ本を書き、「約40年間、日の当たらないところにいたおかげで多くのことを試すことができた。苦情に近いことも言われるが、平仮名は言葉の先に連想が広がる」と語る。
7歳の時に感銘を受けた北原白秋の童謡が自分の原点と話し、「形にならないものを言葉で表現する、言葉の器で捉え込むことにずっと興味を持ってきた」という。「やりたいことは幼児の時から変わっていない。苦労もし、道しるべにもならないが、それが自分の人生」と凛(りん)としたたたずまいで力を込めた。