いじめゼロ映画で発信 「十字架」筑西で7月から撮影
筑西市出身の陶芸家・板谷波山を描いた映画「HAZAN」を手掛けた五十嵐匠(しょう)監督(55)が、いじめ問題を取り上げた重松清氏の小説「十字架」を映画化することになり23日、同市で製作発表が行われた。五十嵐監督は、同市内の中学校がいじめ問題に積極的に取り組んだことを知り、同市をロケ地に選んだ。「筑西市発信いじめゼロ映画」として、7月から撮影を始める。須藤茂市長は、地元中高生にも出演してもらうなど「市全体で応援していきたい」としている。
映画「十字架」は、いじめで自殺した中学2年の男子生徒をめぐり、死を受け入れられない母と、見殺しにした同級生を許さない父、そして同級生の20年にわたる心の葛藤を描く。父親を永瀬正敏さん、母親を富田靖子さんが演じる。7月20日ごろから8月にかけて、同市内の中学校などを中心に撮影が行われる。2015年秋に全国公開する予定。
五十嵐監督は「筑西市内の中学校で、生徒会が中心となっていじめ問題に取り組んだのを本で知った。ぜひ筑西からこの映画を発信したいと思った」とロケ地に選んだ理由を説明した。さらに「通常のいじめ映画と違い、いじめに対して何もしない人たちが主人公。誰でも経験があり、皆さんに向かっての映画と言っていい。いじめはどれだけ人間を壊すのか描きたい」と訴えた。
生徒自らいじめ撲滅に取り組んでいるのは市立下館中。全国的に中学生の自殺が相次ぎ社会問題化した1996年、生徒による「君を守り隊」を発足させ、いじめの芽を摘みたいと先輩から後輩へと活動が受け継がれている。有志による自主活動だが、最近は全生徒が入学とともに入隊しているという。
中学校内のシーンをよりリアルに描くため、地元の中学生や高校生にも出演してもらう。5月3日、市立明野公民館でオーディションを行う。
上野怜市同市教育長は「中学生にとってもいじめ問題を考える良い機会だと思う。地域全体で考えていかなければならない問題」と話した。
オーディションに関する問い合わせは市商工観光課内ちくせいロケーションサービス映画製作準備室TEL0296(54)7013。