インドネシア・れんが住宅 防災研が比較倒壊実験
つくば市の防災科学技術研究所は5日、同市天王台の同研究所内で、地震の横揺れを再現できる大振動台を使って、耐震補強したインドネシアの一般的なれんが住宅と無補強住宅2棟の比較倒壊実験を公開した。耐震補強した住宅は阪神大震災を超える揺れにも耐え、目に見える破壊を免れた。防災科研の今井弘研究員は「細かなひび割れも見えず、耐震工法の有用性が実証された」と評価した。
実験は開発途上国の住宅の耐震性向上のため研究の一環で行った。研究者や留学生、報道関係ら約100人が見守った。
インドネシアのれんが組み住宅2棟を振動台上に再現。一方は現地で安価に手に入る鶏小屋用の鉄製網をれんがの内外壁に張り、上からモルタルを塗り込んではさんで補強した。現地では新築コストの15〜20%増で施工できるという。もう1棟は柱もなく、耐震工学的に配慮のない一般的な住宅工法で建てた。
振動実験は計3回行われ、阪神大震災の80%の揺れでは2棟とも目に見える被害は出なかったものの、2回目に震災と同等の振動が加わると、無補強住宅の壁は一瞬で崩れ落ちた。傍らのマネキン人形もれんがの下敷きになり、被害の大きさも想像できた。これに対し補強住宅は、3回目に震災の110%の揺れを再現しても被害はなかった。
今井研究員は「安く簡単に耐震補強できる工法として効果が実証された。強度解析を進め、開発途上国での普及にも役立てたい」と語った。
インドネシアでは、2006年のジャワ中部地震で約5600人が死亡し、ほとんどは建物の倒壊が原因。実験結果は同国政府を通じてイベントなどで放映し、耐震補強の啓発にも使われる。
(芳賀和生)