県近代美術館 「ベン・シャーン展」開幕 社会批判と人間愛
人種差別や貧困など社会的テーマに取り組んだ米国画家、ベン・シャーン(1898〜1969年)の画業をたどる「丸沼芸術の森所蔵 ベン・シャーン展」が25日、水戸市千波町の県近代美術館で開幕した。第五福竜丸被ばく事件(1954年)に取材したシリーズをはじめ、水彩画や版画、ポスターなど約300点を展示。旺盛な批判精神から生まれるメッセージとともに、人々の痛みに寄り添うシャーンの深い内面が感じ取れる。
芸術を通じた社会貢献を続けるアトリエ村「丸沼芸術の森」(埼玉県朝霞市、須崎勝茂代表)が、被災県への復興支援の一環として主催、協力。同館では2013年の「アンドリュー・ワイエス展」に続く展覧会となった。
本県初の「ベン・シャーン展」では、「丸沼芸術の森」が所蔵するシャーンの初期から晩年の作品を一堂に展示。素描を中心に水彩画や版画、ポスター、壁画の下絵などを紹介している。第五福竜丸被ばく事件を題材にした「ラッキードラゴン」シリーズ、レーニンやガンジーをはじめ世界の偉人を描いた作品、ドイツの詩人、リルケの小説に基づく版画などが存在感を示している。
同館の永松左知学芸員は「ベン・シャーンの魅力は、世の中の理不尽さに向き合い、そこから生まれるメッセージ性にある。また、社会的弱者に寄り添う温かな視点もぜひ感じ取ってほしい」と話す。セレモニーでは「丸沼芸術の森」の須崎代表、小野寺俊県教育長らがテープカットを行い開幕を祝った。会期は7月5日まで。
(沢畑浩二)