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城里のひな人形 桂雛の伝統守る

女びなにはかまを着せる小佐畑孝雄さん=城里町阿波山
女びなにはかまを着せる小佐畑孝雄さん=城里町阿波山
「かさねの色目」で着付けした桂雛
「かさねの色目」で着付けした桂雛


3月3日はひな祭り。江戸時代に定められた五節句の一つで、女の子の健やかな成長を願い、華やかなひな人形や段飾りが作られるようになった。そのひな人形の生産地は埼玉県の岩槻などが有名だが、茨城県にも戦後から作られている伝統のひな人形がある。城里町の「桂雛(かつらびな)」。全国でも少なくなった手作りのひな人形だ。その技術を受け継ぐ人形作家・小佐畑孝雄(こさはたたかお)(43)さんは、伝統を守りながら新しい挑戦を続けている。

■一時、衰退も

明治中期ごろから、埼玉県や静岡県と並ぶ代表的なひな人形の産地だった水戸市。そこで水府雛作りを修業した小佐畑喜士(こさはたきし)さんが、1945年に城里町(旧・桂村)で作り始めたのが桂雛だ。市場の減少などで一時衰退したが、喜士さんの孫で3代目の孝雄さんが復興させている。

桂雛は、華美な装飾を控えたシンプルなひな人形として確立した。225の部品からできていて、作業の分業化が進んだ現代でも、体の部分は一貫して手作り。約1カ月の丁寧な手仕事で作り上げる。その技術が高く評価され「茨城県郷土工芸品」や「城里町指定無形文化財」に指定されている。

■変化や革新

孝雄さんは伝統を守りつつ、桂雛を時代の需要に合わせた姿に少しずつ変容させている。現代の家の大きさや収納の問題を考え、かつて主流だった段飾りから、男びなと女びなの一対の「親王飾り」を中心にした。さらに、人の目線に着目。低い家具の上に飾られることが多いため、上からの目線を意識した着付けにした。「かさねの色目」と呼ばれる優美なグラデーションの衣装。特に女びなの十二単(ひとえ)は裾を長くして折り目を付け、流れるような動きが出るように工夫を施している。現在の桂雛の最大の特徴だ。

買い手の声に耳を傾け、地元の素材を積極的に使うことにも力を注いでいる。そこから生まれた革新的な発想が、インテリアとして年中飾れる桂雛。節句用の華やかな色彩の衣装より、色調が落ち着いたものを作る。水戸黒染の製法を基に染めた結城紬(つむぎ)を使ったり、真珠を縫い付けて舞い散る雪を表現したりするなど遊び心も取り入れ、誕生日やリフォームなど記念の贈り物として購入されている。

■創造

桂雛の復興の裏には、孝雄さんの絶えざる挑戦がある。「伝統工芸は守るものではなく、半歩、一歩先を行くのが本来の姿。桂雛の根幹『シンプル』を守りつつ、これからも新しいことにチャレンジしていきたい」と3代目。伝統文化に独自の価値を加え、新たな文化を創造する。(勝村真悟、写真は菊地克仁)



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