色あせぬ「手塚の世界」 生誕90周年県近美企画展 原画や映像 名作紹介
「鉄腕アトム」「火の鳥」で知られる漫画家、手塚治虫さん(1928〜89)の生誕90周年を記念する企画展が15日、水戸市千波町の県近代美術館で開幕した。常に新しい表現に挑み続けた巨匠の生涯を、不朽の名作の数々から厳選した直筆原画や映像資料などを通じて多角的に紹介。現代でも色あせない「手塚の世界」を体感しようと、愛好家や親子連れでにぎわっている。会期は8月25日まで。
同展は「ジャングル大帝」「リボンの騎士」などの代表作を中心に、丹念に描かれた原画やセル画など約300枚がそろい、会場内を華やかに彩る。
最初に手掛けた漫画とされる小学3年生の頃の作品「ピンピン生チャン」(37年)やデビュー作の4こま漫画「マアチャンの日記帳」(46年)の原画、亡くなる間際まで連載していた未完の直筆原稿も展示。60年代の絵コンテの中には、現在アニメ監督として活躍する林重行さん(現りんたろう)らが描いたものがあり、愛好家の注目を集めている。
映像資料では、きょうだいと無邪気に遊ぶ幼少の姿やアニメ「鉄腕アトム」の制作風景を公開。トレードマークのベレー帽や眼鏡、筆記用具の愛用品も並ぶ。
特別展示として、幕末を舞台にした常陸府中藩(現石岡市)の青年医師が登場する長編「陽だまりの樹」も紹介。主人公の手塚良庵は手塚さんの曽祖父がモデルになっており、直筆原画と共に古文書などの関連資料を紹介している。
会場にはアトムのフィギュアと一緒に写真が撮れるコーナーがあり、館内でキャラクターの塗り絵や手塚さんの絵本も楽しめる。
「ブラック・ジャック」の大ファンという常陸大宮市、小学6年生、山田依歩(いぶ)さん(11)は「絵がすてきで物語の内容もよく考えられていてすごい」と声を弾ませ、「初めて知った作品もあったので読んでみたい」と目を輝かせた。(勝村真悟)