台風19号 那珂、久慈川が氾濫 県内、大規模に浸水
関東を直撃した台風19号の影響で、県内は12日から13日未明にかけ、大雨特別警報が発表される記録的な豪雨が降った。常陸大宮市の那珂川や大子町の久慈川などが堤防決壊や越水などで氾濫し、大規模な浸水被害が発生した。県災害対策本部によると、大子町で女性1人が死亡、常陸大宮市で男性1人が行方不明のほか、少なくとも14人が負傷した。大子町の久慈川に架かるJR水郡線の橋(きょう)梁(りょう)が濁流に流された。県は自衛隊に災害派遣を要請し、浸水地域に取り残された住民の救助活動が続いた。
水戸地方気象台によると、降り始めからの総雨量は北茨城市花園で462・5ミリ、常陸太田市徳田で339・5ミリと24時間雨量としては観測開始以来最大。最大瞬間風速はつくばで32・5メートル、鹿嶋で30・7メートル、龍ケ崎で28・3メートルを記録した。
同本部によると、大子町の女性(91)が13日朝、自宅1階台所で心肺停止の状態で倒れているのを近所住民が発見。室内の壁が高さ約165センチまで水に漬かった跡があり、検死の結果、溺死と判明した。常陸大宮市では男性(71)が12日夜、外の様子を見に行ったまま行方不明。このほか、桜川市の男性(85)が風にあおられて転倒し、頭を打って重傷を負うなど、計14人がけが。
13日午後1時現在で、常陸大宮市の那珂川で堤防2カ所(野口、下伊勢畑)、久慈川でも堤防2カ所(富岡、塩原)が決壊した。大子町の池田・矢田の久慈川も氾濫し、町中心部が約2平方キロにわたり浸水、町役場も1階部分が水に漬かった。水戸市岩根町、藤井町、飯富町では那珂川に合流する河川の水があふれ、広い範囲が浸水被害に見舞われた。筑西市川島の鬼怒川でも越水した。
県によると、国・県管理の県内河川の48カ所で水があふれた。国土交通省利根川下流河川事務所によると、稲敷市の利根川の観測所で午後6時ごろ、氾濫危険水位に到達。同9時現在、依然として水位が上昇、同事務所は下流部全域に警戒を呼び掛けている。
建物被害は午後2時半現在で、常陸大宮市で床上・床下浸水が約500棟、水戸市でも床上浸水が多数発生しており、確認作業を進めている。ほかに潮来市で一部損壊1棟、八千代町など3市町で床上浸水、桜川や城里など6市町で床下浸水があった。
県防災ヘリや県警ヘリなどが出動し、水戸、常陸太田、常陸大宮、城里、大子の5市町で計136人を救助し、現在も活動を継続している。
県内16市町村で最大7万9093世帯20万4910人に避難指示、23市町村で最大23万6856世帯59万1093人に避難勧告が発令された。
避難所は全44市町村に526カ所開設され、一時は計6664世帯1万9595人が避難。午後2時半現在で、なお20市町村で約1万人が避難している。
停電は午前6時半の時点で鹿嶋、つくば、取手、行方、大子など24市町で約3万6千軒発生した。
JR水郡線は茨城、福島両県で三つの橋梁が被害に遭った。袋田-常陸大子間の第6久慈川橋梁が濁流に流され、西金-上小川間の第2久慈川橋梁も傾斜。JR水戸支社は「復旧のめどは立っておらず、代替輸送を検討中」としている。
県は被害が甚大として、17市2町に災害救助法の適用を決定した。(三次豪)