台風19号 ボランティア、県内各地で活発 家財運び、泥かき出し 「役に立ててうれしい」
台風19号で被害を受けた県内各地で、災害ボランティアの活動が活発になってきた。水に漬かった家財道具の運び出しや泥のかき出しなどの作業にいそしむ。被災者からは「ありがたい」と感謝の声が上がっている。ただ、地域によっては派遣の遅れがあるほか、車両が足りず被災区域への移動に時間がかかるといった課題も出ている。
▽「行動早い」
大子町大子の80代夫婦宅では18日、ボランティア8人が泥まみれの家財道具を中から運び出した。妻は「主人が腰を痛めていて、女手だけではどうにもならなかった」と感謝した。
常陸大宮市盛金の高林美代子さん(65)方では、地元の高校生12人が作業を手伝った。「若い人に来てもらい助かった。行動が早い」と高林さん。家具などを運んだ長岡迫さん(16)は「当たり前の生活がいかに幸せか実感した。役に立ててうれしい」。
常陸太田市松栄町、安一也さん(37)方では築5年の住宅が床上浸水。安さんは「家電も車もみんなやられた」と肩を落としたが、「こういう時に、人のありがたみが分かる」。作業を手伝うボランティア5人を見て声を震わせた。
▽惨状に絶句
水戸市岩根町の海野洋子さん(77)は16日から作業を依頼。畳や家財道具を全て外に運び出してもらった。海野さんは「自分だけではどうにもならなかった」と安堵(あんど)した。千葉県から来た武田一博さん(47)は経験豊富な災害ボランティア。「被災された方が早く元の生活に戻れることがゴール」と汗を流した。
近くの学生も駆け付けた。茨城大2年の長谷部拓斗さん(20)は「こんなに被害が大きいとは」と絶句していた。同大3年の池田成徹さん(20)は「地元の人が頑張っている姿を見て、それ以上に頑張らなければ」と、逆に元気をもらった様子。
▽車足りない
作業が進む一方、課題も散見される。
常陸大宮市盛金の男性(40)は14日に泥のかき出しなどで依頼したが、18日午後になってようやく約10人が来てくれた。男性は「もっと早く来てほしかった」と漏らしつつ、「多くの人数で作業が進んだ。今後も人手が欲しい」と望んだ。
常陸太田市ではボランティアセンターから被災区域へ移動する車両が「レンタカーも借りられず、絶対的に足りない状況」(西野千里センター長)。ボランティアの男性(45)は「巡回の車がいつまで待っても来ないので、結局マイカーで移動した」と明かす。同センターは市内のタクシー業者の協力を得ることも検討している。
18日になり車両数台がようやく集まった大子町。これまで中心地以外への派遣が難しく、支援が回らない地域から不満の声も出ていた。同町ボランティアセンターの麻生弘センター長は「作業が一度で完了しなくても必ず再訪する態勢を整える」と、広く長期的な支援に力を込めた。
水戸市では路上に止めたボランティアの車両がごみ収集車の通行の妨げになるケースも見られた。同市社協が所有するマイクロバスなどを使い、送迎する準備を進めている。
水戸、常陸太田、ひたちなか、常陸大宮、大子の各市町災害ボランティアセンターは19日、降雨のため活動を取りやめる。(小原瑛平、湯浅奈実、佐藤珠貴、蛭田稔)