激動の世 生き抜く 県立歴史館「近代茨城の群像」 書や写真、衣装紹介
水戸市緑町の県立歴史館で、テーマ展(3)「近代茨城の群像-新時代を生きた人びと-」が開かれている。幕末から昭和にかけ、変化の激しい近代を生きた茨城ゆかりの人たちを、書や写真、衣装、ホームムービーなど、多様な資料で紹介している。12月22日まで。
展示は4章構成。第1章は時代の寵児(ちょうじ)として、宮中の国際化に貢献した香川志保子(1863〜1936年、常陸大宮市出身)、国内外で医学の近代化に尽力した佐藤進(1845〜1921年、常陸太田市出身)らを紹介した。
志保子は、旧水戸藩郷士で後に皇后宮大夫になる伯爵・香川敬三の長女。英国留学や欧米歴遊で各国皇室と交流し、帰国後に宮中女官に採用され、通訳と服飾担当として、父敬三とともに昭憲皇太后(明治天皇の皇后)を支えた。今回、志保子が使用した「イヴニングコート」などを初展示。ゆったりとしたシルエットで、1910〜20年代に欧州で見られたデザインとなっている。
第2章は、幕末明治の水戸藩の藩内抗争の門閥派関係者に触れた。斉昭の復権とともに失脚、処刑された結城寅寿(1818〜56年)や子孫の苦難などを示している。第3章は、本県ゆかりの戦前のジャーナリストについて、石河幹明(1859〜1943年、水戸市出身)を中心に展開。死去1カ月前の福沢諭吉から石河へ贈られた福沢絶筆の書「独立自尊迎新世紀」などを展示している。
第4章はサンフランシスコ講和会議で全権委員を務めた徳川宗敬(1897〜1989年)ら戦後復興に関わる人物を取り上げた。吉田茂とともに条約調印に臨んだ際の写真がある。
また今回、昭和初期に宗敬が撮影したと思われるホームムービーを公開。本年度に同館がデジタル化した。同館主任研究員の石井裕さんは「当時の華族の結婚式の様子などが記録され、大変貴重な資料」と話している。
会期中の23日と12月15日は、午後1時半から展示解説を行う。同館(電)029(225)4425。月曜休館。(藤田裕一)