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《新型コロナ》茨城県、重症者向け病床確保へ 軽症・無症状者対応 宿泊療養拡充急ぐ

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新型コロナウイルスの感染拡大を受け、茨城県は軽症者や症状のない患者の宿泊療養の受け入れ体制整備を急いでいる。さらなる感染者増に備え、重症や中等症患者向け病床の“余力”創出が目的。自宅療養中の埼玉県内の男性2人が死亡したのを受け、自宅療養を見直し宿泊療養を基本とするとした国の方針転換も踏まえた。県内感染者のうち、宿泊施設で療養中なのは29日現在、31人に上り、既に1人が退所した。県は民間を含む5施設430室を確保するめどを立てるが、本格的な運用はこれから。感染防止対策や近隣の住民理解など課題も残る。

■方針転換

県内感染者は同日現在、163人。県は感染患者の受け入れ病床を119床から151床に拡充するが、入院者は既に64人(29日現在)に上り、半数近い病床が埋まった状況だ。

治療の必要な患者が入院できなくなる事態に陥らないよう、県は4月に入り、原則全ての感染者を入院させていた方針を転換。入院患者の7割を占める軽症者や無症状者を、症状に応じて医師の判断や本人の意思に基づき、宿泊施設へ入所させる方針を決めた。

県は14日に公共宿泊施設での受け入れを開始。これまでに民間を含む4施設230室を確保し、今後さらに5施設430室まで拡充する計画。

さらに、自宅療養を見直す国の方針を踏まえ、自宅療養中の患者についても宿泊施設への入所を促していく。県医療政策課は「今後は症状のない方などは、直接施設で受け入れることもあり得る」としている。

■対策徹底

厚生労働省の宿泊療養マニュアルは「トイレや入浴設備を含め、個室対応が望ましい」とし、患者が個室で生活を完結できる体制を定めている。運営には施設内での二次感染を防ぐゾーニングなど、徹底した感染対策が求められている。

施設を運営する人手の確保も課題。県は受け入れる民間施設の従業員に協力を求めるほか、一度現場を離れた潜在看護師を含めた医療従事者やOB、業界団体などにも協力を仰ぐ方針。

こうした運営体制の構築へ向け、20日には県保健福祉部内に「新型コロナウイルス療養施設担当課長」のポストを新設し、施設の本格運用を急ぐ。久保三千雄課長は「通常の医療機関と同様の対策を、さまざまなシミュレーションをしながら実践していく」と話す。

■二の足も

14日から軽症患者を受け入れているつくば市の公共施設では、周辺住民が反発するケースも見られた。利用客や近隣住民の反対を懸念し、提供に二の足を踏む施設も少なくない。

患者受け入れを表明した大手ホテルの県内フランチャイズ加盟事業者は「対応は本部と異なるが、患者は受け入れない」との考えを示す。本部が方針を表明した翌日、同事業者のホテルでキャンセルや問い合わせが相次いだためだ。県ホテル旅館生活衛生同業組合は「社会貢献として患者を受け入れたいが、判断は各施設に委ねるしかない」と話す。

感染症対策が専門の岡部信彦・川崎市健康安全研究所長は「通常、ウイルスは近い距離で感染する。療養施設の窓などから大気中に飛散したり、近隣の住宅に入り込んだりすることはあり得ないので、安心してほしい」と理解を求めた。(前島智仁)

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