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新型コロナで窮地も多くの支援 水戸の障害者施設がカフェオープン 夢の実現、喜びかみしめる

「くれよんカフェ」の店内。プレオープンの25日、午前から来店が相次いだ=水戸市元吉田町
「くれよんカフェ」の店内。プレオープンの25日、午前から来店が相次いだ=水戸市元吉田町
29日にオープンする「くれよんカフェ」=水戸市元吉田町
29日にオープンする「くれよんカフェ」=水戸市元吉田町


水戸市元吉田町の障害者支援施設「くれよん工房」が29日、カフェをオープンする。メニューは全て利用者の手作り。施設長の武田由美さん(65)が、障害者の店としてではなく地域の一店として社会に認めてもらおうと26年。夢が実現し、障害の有無に関係なく誰もが交流できる場ができた。施設は新型コロナウイルスの影響でいったんは窮地に立たされたが、多くの支援を得て乗り越えた。利用者と共に、ようやく開店できることの喜びをかみしめている。

■2000人超の注文

施設の利用者は現在46人、職員は16人。隣りの建物で利用者らの手作りによる雑貨や菓子を製造、販売してきた。このうち観光客向けに国営ひたち海浜公園(ひたちなか市)が販売する「ネモフィラクッキー」は収入の柱だ。ただ今年は新型コロナの影響で同園が4月に休園。製造していた20万枚が販売できなくなり、窮地に立たされた。しかし一般販売の許可を得て営業に回ると、2千人を超える注文が来た。もがいてみて12万枚がさばけた。

「途方に暮れた日もあったが、今までにない支援をもらえて、踏み出せる気持ちになれた」と武田さん。開店を迷っていたが前を向けた。カフェの建物は3月末に完成。5月の大型連休明けにオープンする予定だった。利用者もこの1年、1人1個の新商品に取り組んできた。最後は利用者の「やりたい」という言葉が武田さんの背中を押した。

■スタートは95年

1995年に水戸市酒門町にクッキーの店を開設したのが始まり。元は障害者の親たちを中心としたボランティア団体だった。障害者にとって学校は手厚いが社会に出たとき居場所がなかった。「障害者の作った物は安くて当たり前」という偏見があった。「社会参加できる場、障害があってもなくても売れる場がほしい」。そう思い立ち、少しずつ歩んできた。

建物は、黄や茶の暖かい色合いが特徴で円柱と四角、三角が連なる。1階には、カフェのほか、雑貨や菓子などを販売するスペースと調理場、事務所など。2階には利用者らがアクセサリー作りなどに取り組む作業室。感謝を込めて25日から支援者らをプレオープンに招待した。「全館バリアフリー。車いすの人も高齢者もゆっくりできる」と武田さんは胸を張る。

■思いをつないで

カフェは誰もがくつろげる空間を目指した。ジュースやケーキなどメニューは全て利用者の手作り。アイスティーなど1杯300円から。営業時間は午前10時半〜午後4時半。定休日は日曜、祝日。接客は職員が当たる。利用者にはできることを訓練し、徐々に参加してもらう。感染対策でテーブル間に仕切りを置き、席数を減らしている。混雑を避け、当面、昼食は出さない。

「障害者の店」とはうたっていない。「通りすがりのお客さまが立ち寄って、『かわいい』と言ってくれるとうれしい」。クレヨンは一色で描いても絵にならない。「皆でできることをつないだら、社会に評価されるものがきっとできる」。26年越しの思いをつないだ「くれよんカフェ」ができた。

問い合わせは社会福祉法人くれよん(電)029(247)9040

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