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開業医、熱中症診察に苦慮 新型コロナと症状酷似 感染疑いで休診懸念

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新型コロナウイルスの感染再拡大と猛暑が重なった今夏、同感染症と症状がよく似る熱中症患者の対応に診療所などの開業医が苦悩している。診察するまで判別が難しく、多くの診療所で別室や動線が確保できないほか、患者の感染が疑われた時点で休診に追い込まれかねないからだ。発熱症状のある患者を一律に保健所に連絡する医療機関も一部であるとみられ、患者の重症化や感染症指定病院のさらなる負担増につながることが懸念される。11日に県内観測史上最高の39.6度を記録した古河市の医療機関の対応を取材した。

■動線分けられず
県内各地で真夏日となった8月上旬。「例年は熱中症患者を診ているが、今年は安請け合いできない」。諸川中央医院(同市諸川)の酒井慎介院長(70)は表情を曇らせた。

同医院では、熱中症患者は待合室からレントゲン室などの前を通って診察室に入る。防護服やフェースシールドはなく、動線は一般患者と分けられない。症状は電話かインターホンを通じて事前に確認し、診察する場合でも一般に配慮してレントゲン室で待たせている。

酒井院長は新型コロナの感染防止にいくら気を配っても「実際に診察しなければ、熱中症かどうかは分からない」と強調。万が一、感染が疑われれば、医療従事者が濃厚接触者となり、2週間の休診や院内の消毒作業などに追いやられる可能性を懸念する。

■「陰性」出てから
熱中症は高温多湿の環境に体が適応できないことで発熱や強い倦怠(けんたい)感などを引き起こす。重症化すると意識障害を起こし命を危険にさらすため、体を冷やすなどの初期治療が大切だ。

患者の対応は医療機関ごとに異なるといい、同市の一部の開業医は、諸川中央医院と同様の方法で受診の可否を判断している。

古河福祉の森診療所(同市新久田)では、施設に入れる前に、患者の行動歴を入念に聞き取っている。医師の赤荻栄一所長(70)は「古河市や県内の感染者の多くは感染経路が確認されている。きちんと問診すればコロナと熱中症の区別はつくはず」と話す。

だが、開業医の中には感染の影響を恐れ、診察を最初から受け付けないところもあるとみられる。

市内の医療関係者は「発熱症状がある患者を一律に保健所に連絡し、PCR検査でマイナス(陰性)の結果が出てから初めて診察を受け付けている医療機関もあるようだ」と証言した。

■「グレーゾーン」
感染症指定病院の古河赤十字病院(同市下山町)では、コロナと熱中症の患者を鑑別するため、数十分で結果が出る抗原検査を導入。陰性の場合は臨床症状を加味して判断している。

小山信一郎院長は、新型コロナの疑いがある患者の受け入れを敬遠する一部の動きについて「(抗原検査を)やる場所がないのでは」と述べ、一定の理解を示す。ただ「患者が指定病院に集中すれば、負担は増す」と懸念した。

一方、酒井院長は患者の速やかな診察と指定病院の負担軽減のため、コロナと熱中症の「グレーゾーン」を振り分ける場が必要と主張。「インフルエンザの時季には、風邪症状の患者を受け付けなくなるところが出てくる可能性が高い。国が体制を整え、熱中症で課題を確認して秋冬に備えるべきだった」と話す。

赤荻所長は「濃厚接触による2週間の経過観察が、開業医の大きなリスクになっている」と指摘。新型コロナの症状が分かりつつあることを踏まえ「コロナを指定感染症から外すべき。そうしないと、開業医も指定病院も全てがパンクしてしまう」と述べた。



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