《八千代町の課題・町長選を前に》移住・定住促進が重要

人口が25年前のピーク時の2万5千人から約16%も減った八千代町。町は人口減少を抑制する対策の一環として、移住・定住事業や子育て世代への支援策を打ち出す。一方で、町民からは子どもが楽しめる施設や交通機関の利便向上などを求める声も聞かれる。町の将来、在り方を問う町長選を前に課題を探った。
▽子育て支援
八千代町高崎のみどりが丘保育園内の子育て支援センター。21日午前、母親と乳幼児の親子6人が集まり、母親は赤ちゃんをあやしながら談笑していた。
3人の母親は全て県外出身で結婚などを機に町民になった。町の印象について、栃木県出身の母親(31)は「近所の人が優しい。子どもを見ると声を掛けてくれる」と笑顔で話す。岐阜県出身の母親(34)も近所付き合いは良好。ただ「小さな子が遊べる施設がない。週末は外食で町外へ遊びに行く」と近隣市の施設に目が向く。
福島県出身の母親(31)は、3回に分け計20万円支給される町の第2子出産子育て奨励金受給に「ありがたい」。一方育休から職場へ復帰後、子どもが体調を崩した場合に「預けられる施設があって見てもらえれば」と、仕事と育児の両立のため病児保育事業の必要性を訴える。
同センターは町内に3カ所あり、全て保育園内に設置。町福祉課によると、利用無料で、2019年度の子どもの利用数は延べ1361人。保護者同士の交流の場になっている。
▽人口減少
子どもを産み、育てる世代をはじめ、移住・定住の促進は重要課題だ。
町教委によると、1995年(5月1日現在)の小中学校の児童・生徒数は計3035人だったが、本年(同)は約半数の計1541人まで激減した。この数字が物語るように、町の人口も95年の2万5008人が最多で、現在の常住人口は2万919人(8月1日現在)と、25年間で約16%も減った。
町人口ビジョン(2016年策定)では、02年以降は死亡数が出生数を上回り、長年自然減に入っている。人口減少がさらに進めば、地域経済や産業の衰退、町財政にも影響を及ぼす。
町は転入者住まい応援助成金、新婚家庭家賃助成、第2子・第3子以降の出産子育て奨励金などを用意。「人を呼び込み、人口減少の幅をいかに抑えられるか」(町まちづくり推進課)に注力する。
▽選ばれる町
町は生産量日本一のハクサイなど農業が盛んで家族経営が多い。主力の農業に続く雇用の場も不可欠だ。
神奈川県から転入した5人家族の男性(38)は、日野自動車古河工場(古河市名崎)に勤める。転勤で住宅を探そうと、町の施設を巡るモニターツアーに参加した。古河方面の1路線というバス交通の不便さは感じるが、3人の子どもが周りに溶け込み「過ごしやすい」と長く住みたい考え。
今後、町が期待するのは全3区画が完売した八千代工業団地(同町菅谷)の進出企業の雇用動向。中でも食料品製造のフジフーズ(千葉市)が整備する新工場の雇用は800人規模と見込まれている。同課は、事業者向けの社宅・社員寮整備支援事業などを挙げ「スムーズに雇用の確保につながるように支援していきたい」と意気込む。
若い世代や定住・移住希望者から「選ばれる町」になれるか。新たな企業誘致計画など次の一手も必要だろう。新町長の手腕が問われる。
町長選は9月1日告示、同6日投開票で行われる。