PCR検査検体採取キット製造フル稼働 町工場、休日返上し奮闘 常陸大宮
新型コロナウイルスの検査態勢拡充が叫ばれる中、社長と従業員7人の計8人が従事する常陸大宮市の小さな町工場が、休日返上でPCR検査の検体採取キットの製造やフェースガード作りに励んでいる。これまで培ってきた医療器具製造などのノウハウを活用。「世の中に役立つものづくり」を掲げてきた同社は、充実感を得ながらフル稼働している。
会社は、同市上小瀬にあるプラスチック製品製造業の「ササキモールド」。注射器や検査キットなど医療器具をはじめ、自動車やバイクの部品、水中メガネなど、金型機械を使って幅広い分野の製品を手掛けてきた。
コロナ禍を受け経営状況が一変。さらに、取引先でもある医療機関への心配が募った。
「国の方針転換で、輸入に頼って数量が限られていたPCR検査キットの製造依頼が3月ごろから入るようになった」と佐々木定夫社長(59)は明かす。
製造するのは、患者の検体を採取する綿棒と、採取した検体を検査機関に運ぶための容器だ。
これまで手掛けてきたインフルエンザ用の検体採取キットの製造ラインを改良し、新型コロナ用のキット製造につなげた。現在、週末2日の定休日のうち土曜日の休みを返上。月80万〜100万セットを生産し、医療メーカーに卸している。
クラッチ板やブレーキセンサーの部品、部品を留めるクリップなど、全体の約3割を占めていた車関連の製造は現在ストップ。PCR検査キット関連の製品製造にシフトしている。
さらに、「医療機関で働く人たちがまず感染しないように」との思いから、都内の関連業者と協力して部品を分担し、独自にフェースガードを開発した。「新しい生活様式」が模索される中、スポーツやボランティア活動など屋外での感染防止策として、UVカット加工を施したキャップ型帽子に直接装着できるフェースガードも生み出した。
佐々木社長は「創業から約30年、世の中に役立つものづくりを志してきた。さらに知恵を絞り、医療分野などで活用できるいろいろなものができれば」と意気込む。
「困っているので大変ありがたい」「何とか手に入れたい」。医療機関や高齢者施設で働く人たちから、感謝の気持ちや窮状を訴える声が届く。こうした声に応えるため、8人の奮闘は続く。