城里で鳥インフル 茨城県、84万羽殺処分へ 県内15年ぶり 陸自に派遣要請
茨城県は2日、城里町の養鶏場で高病原性鳥インフルエンザの感染を確認し、飼育している鶏約84万羽の殺処分を始めたと発表した。今季17県目、国内41例目。県内養鶏場での鳥インフルエンザの発生は2006年1月以来15年ぶり。県は家畜伝染病予防法に基づき、殺処分を開始するとともに陸上自衛隊に災害派遣要請した。殺処分は1日当たり県職員360人や自衛隊員約60人ら延べ約1100人態勢で実施し、完了まで10日程度かかる見通し。
県によると、養鶏場は県内最大規模の農場。出荷するのは、食用卵や採卵の役割を終えた食肉用の鶏で他農場への二次的な感染の可能性は低いという。殺処分を行った養鶏場に対しては同法に基づき手当金が支払われる。
1日午後、養鶏場から死亡羽数が増えたと県家畜保健衛生所に連絡があり、計5棟の鶏舎のうち1棟で1月31日に66羽、1日に171羽の死んだ鶏が見つかった。県の簡易検査で13羽のうち11羽が陽性となり、2日に県の遺伝子検査で高病原性の疑いがあるH5型の鳥インフルエンザウイルスが確認された。
県は発生農場から半径3キロ以内を鶏や卵の移動を禁じる「移動制限区域」に、10キロ圏内を圏外への移動を禁じる「搬出制限区域」に設定した。感染拡大を防ぐため、半径10キロの制限区域内の幹線道路沿い6カ所に消毒ポイントを設け、養鶏場に出入りする車両などを消毒する。
移動制限対象の農場は城里町と水戸市内の4戸(飼養羽数約13万羽)で、鳥インフルエンザが発生していないか検査している。搬出制限対象の農場は水戸や那珂、城里、笠間、常陸大宮の計5市町内の14戸(同約91万羽)。
大井川和彦知事は葉梨康弘農林水産副大臣とウェブで会談し、防疫措置に使う防護服やマスクなどの資材供給や現場の対応に当たる獣医師の派遣などで支援を求めた。大井川知事は「県対策本部を中心として城里町、自衛隊、関係機関と十分連携しながら防疫措置を進めている」と説明。その上で「防疫措置の現場において作業のリーダー役となる獣医師の方々、それから防護服の資材の不足が強く懸念されている」と指摘した。
葉梨副大臣は「国としてもしっかり応援していく」とし、疫学調査チームの派遣については「しっかりと原因の究明を行っていくことが非常に大切だ」と述べた。農水省は同日、防疫対策本部を開き、専門チーム派遣などを通じ、殺処分や焼埋却といった防疫措置の支援を決めた。
2018年の農林水産統計によると茨城県は鶏卵の農業産出額が449億円、鶏卵生産量は22万4245トンでともに全国1位。
★鳥インフルエンザ
A型インフルエンザウイルスが引き起こす鳥の病気。鳥に対する病原性の違いやウイルスの型によって「高病原性」と「低病原性」などに区別される。高病原性に感染すると多くが死ぬ。低病原性ではせきなど軽い呼吸器症状が出たり、産卵率が低下したりする。国内では、鶏肉や鶏卵を食べることによって人に感染した事例は確認されていない。