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水戸の看板会社製作、「赤とんぼ」実物大模型 コロナや豪雨乗り越え熊本の資料館で3月展示へ

完成した赤とんぼの実物大模型と斎藤裕行さん(右)、妻定子さん=小美玉市小岩戸の日本立体
完成した赤とんぼの実物大模型と斎藤裕行さん(右)、妻定子さん=小美玉市小岩戸の日本立体
熊本県へ送り出す赤とんぼの実物大模型を見つめる斎藤裕行さん(右)と妻定子さん=小美玉市小岩戸の日本立体
熊本県へ送り出す赤とんぼの実物大模型を見つめる斎藤裕行さん(右)と妻定子さん=小美玉市小岩戸の日本立体


看板製作など手掛ける広洋社(水戸市)が、旧日本海軍航空隊が使用した「九三式中間練習機(通称・赤とんぼ)」の実物大模型を完成させた。3月1日にリニューアルする熊本県内の資料館の依頼で製作。2020年7月豪雨による資料館工事の一時中止や、新型コロナウイルス感染拡大などの困難を乗り越えて完成にこぎ着けた。同社の斎藤裕行専務(52)は「いいものができた。水害があり、コロナ禍の中、地元の人に明るい気持ちで見てもらえれば」と模型を送り出す。

赤とんぼは1934(昭和9)年、日本海軍に制式採用された飛行機で、計5589機が生産された。海軍練習機の代名詞でもあった。模型は陸上型の「K5Y1」。全長約8.05メートル、幅約10.9メートル、高さ3.2メートル。金属製の骨組みに、軽量飛行機に使われるポリエステルの羽布を張った。象徴的な機体のオレンジ色は、現存する当時の羽布を参考に再現した。

広洋社は、文化施設の展示空間などの設計製作に携わり、立体造形の技術を持つ。

これまでに零式艦上戦闘機(ゼロ戦)や、紫電改の実物大模型を製作してきた。赤とんぼの製作は昨年6月から、斎藤さんが社長を務める日本立体(小美玉市)で作業を続けてきた。

熊本県には、太平洋戦争末期に建てられ、飛行場や予科練生の教育施設として利用された人吉海軍航空基地跡がある。同基地の資料館「にしきひみつ基地ミュージアム」(同県錦町)が、リニューアルに伴い赤とんぼの実物大模型の製作を依頼した。

新型コロナの影響で、製作開始前の昨年5月に予定していた、唯一機体が現存するインドネシアへの視察が中止となった。同資料館の関係者と行き来もできなくなり、米国製の羽布は輸入が予定より1カ月半遅れたという。

さらに作業開始直後、20年7月豪雨が発生。戦争遺構や展示施設が被災した。錦町の同資料館は寸前で被害を免れたものの、リニューアル工事は一時中断された。

模型は分割し、トラック4台に分けて22日朝、茨城県を出発し、24日に納品、設置する予定。同資料館が新装オープンする3月1日にお披露目される。

斎藤さんは「災害やコロナ禍は『生きるか死ぬか』という点で戦時中に似ている。赤とんぼをきっかけに過去を見て、人が困難を乗り越えてきた歴史を分かってほしい」と話した。



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