茨城県坂東市内で開かれる「岩井将門まつり」や「ふる里さしま古城まつり」などに訪れた観光客らに、市内の観光名所や飲食店などを周遊してもらうことで商店街の活性化につなげてきた坂東市。ところが、新型コロナウイルス感染症の影響で、昨年春以降、イベントは軒並み中止。商店街の地盤沈下を懸念する声が出始める中、市は、同市ゆかりの武将・平将門の関連史跡などを整備して、まちの魅力を発掘し、観光・交流人口の拡大を図っていく考えだ。

▽商業環境が変化
同市の旧岩井地区中心市街地にある「岩井モール商店街」。市街地を通過する国道354号沿いの「あい・モール」「センターモール」「さくら通り」「ゆうモール」の総延長1・4キロ区間に飲食店など約90店舗が店を構える。深夜まで店を営業する「シンデレラセール」などが好評で、2008年ごろまでは人通りも多く、1997年には中小企業庁の「元気のある商店街100」に選ばれるほどだった。

商店街を取り巻く環境が大きく変化したのは、商店街のシンボル的存在だったショッピングセンター「プリオ101」が2006年末に閉店したこと。一方で、大型ショッピングセンターと食品スーパーが商店街の両端を挟むように出店、商業環境は目まぐるしく変化した。市は、郊外に流れがちな人の流れを変えようとプリオ跡地へ店舗誘致を仕掛けるとともに、イベント内容の充実を図るなど、あの手この手で策を練っている。

▽新規客獲得
商店街の一角にあるバー兼カフェ店は、「岩井将門まつり」と同じ日に開かれるハーフマラソンを機に新規客を獲得。リピーター確保につなげてきた。また、市主催イベントだけでなく、ゴルフ大会など店独自の催しを定期開催し、ファンづくりに工夫を凝らしてきた。

しかし、新型コロナ感染抑制の外出自粛やイベント中止によって、同店を含む市内の各飲食店は「国や県から補助金をもらいたいが、申請する体力さえも残っていない」ほど窮地に追い込まれた。

市は「ダブルプレミアム商品券」を発行し、飲食店などを支援。5千円で商品券を購入すると1万円分利用可能で、店には商品券換金額の5%を市が上乗せする。消費の落ち込み改善と店舗救済のアイデアで、同事業には過去最多となる約490店舗が参加した。市は、好評だったダブルプレミアム商品券を来年度も発行することで市民に消費喚起を促し、商店街を手厚くサポートする考えだ。

コロナ禍で冷え込む飲食店を商品券で救済するとともに、年間約50万人が訪れる人気施設「県自然博物館」の来館者や将門ファンを商店街にどれだけ呼び込めるか。また、商店街の核となる新店舗誘致の実現が坂東市の未来の形を決める要因となりそうだ。