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衆院選 夫婦別姓、望む法制化 当事者の声聞いて 「幸せになれる制度」期待 茨城

選択的夫婦別姓について話し合う小泉祐里さん(右)と田中浩さん夫妻=つくば市内
選択的夫婦別姓について話し合う小泉祐里さん(右)と田中浩さん夫妻=つくば市内


31日投開票の衆院選に関し、選択的夫婦別姓の法制化について、別姓で生活する夫婦から論戦の高まりに期待する声が上がっている。茨城県内では市町村議会で法制化を求める意見書の可決が相次いだ一方で、保守系の議員らには根強い反対意見も残る。当事者は「現実に困っている声を聞いてほしい」「選挙でも決して小さな問題ではない」と切実に訴えている。

■互いを尊重
「一時的に我慢すれば法律的な婚姻が認められると考えていた。それが27年にもなるとは思わなかった」

牛久市の団体職員、小泉祐里さん(52)と、夫で研究員、田中浩さん(62)は苦笑する。2人は1994年に結婚。以来、夫婦別姓の生活を続けている。婚姻届は出していないため戸籍上は事実婚だ。息子の知碩(ともひろ)さん(23)は小泉さんの戸籍に入り、家族生活を送ってきた。

結婚当時、互いのキャリアを尊重し自然に別姓を選んだ。両親に報告すると、「なぜ?」と抵抗感を示された。説明と家族付き合いを重ね、「理解して受け入れてくれた」という。

知硯さんは子どもの頃、父と名字が違うことを友人から聞かれることがあった。「親が選んだことで、普通の家族と変わらない」と説明すると、友人たちは「そうなんだ」と変わらず接してくれた。「別姓だと子どもがかわいそうとか、家族の絆が壊れるとかいわれるが、うちはそれがなく、困ったこともない」と言い切る。

■全国で意見書可決
2人は共働きのため、配偶者特別控除の影響は少ない。共に改姓の苦労がなく、仕事上で利点があった。「子育ては別姓でも全く問題なかった」と話す。

ただ将来、法的な保障がないことに不安もよぎる。例えば、病院で手術や延命治療に同意する際は、基本的に戸籍上の妻が対象になる。相続の際は相続税の優遇を受けられない。

小泉さんは「まるで罰ゲーム。そんなに私は悪いことをしたのか」と声を落とす。田中さんも「通称使用は女性が大半。職場によっては通称使用もできない。声を上げられないでいる人が多い」と指摘する。

2人は「自分たちが声を上げていかないと気付いてもらえない」と考え、地方議会に制度化への意見書可決を求める「全国陳情アクション」に参加。当事者の思いを訴えてきた。意見書可決は、県内9市町、全国300自治体に及ぶ。自治体によっては自民、公明など保守系議員も賛成し、自発的に提案、可決した例もある。

■同姓使用者も活動
国の法制審議会は96年に選択的夫婦別姓の導入を含む民法改正案を答申したものの、国会提出は見送られた。自民以外の主な党は制度に賛成、自民内にも前向きな議連が発足し、岸田文雄首相も呼び掛け人の一人となった。半面、制度化に慎重な議員は旧姓使用の拡大を求める議連をつくった。

陳情活動で2人と共に活動する人の中には、通称や同姓使用の人もいる。議会や市民との勉強会では「一人っ子、一人娘で実家の姓を継がなければならない」「付き合いは長いが、姓の問題で結婚できないでいる」といった切実な声も聞かれた。

小泉さんは「地方ならではの女性の悩み、男性の視点からは見えにくい問題がある」とみる。2人は「同姓婚や伝統的な家族観を否定するつもりはない。制度に別姓も選べるよう加えてほしい。皆が幸せになれる制度を待っている」と期待する。

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