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衆院選 コロナ禍、公約の対策注目 孤独・孤立どう支援 縦割り打破、SOS拾って

障害者生活介護事業所で読書をして過ごす女性=小美玉市内
障害者生活介護事業所で読書をして過ごす女性=小美玉市内


新型コロナウイルス禍で注目された「孤独・孤立問題」は、衆院選でも政党が公約に対策を盛り込むなど注目を集める。当事者を支える現場からは、対策の継続とともに、「SOSの声を拾うため、縦割り打破のネットワークと人材づくりを」と求める声が上がる。

平日の昼下がり、茨城県小美玉市にある民間の障害者生活介護事業所「コーギーの庭」で、通所者の女性(68)は大好きな読書を楽しんでいた。女性は「ここでみんなとおしゃべりしたり、食事したり、散歩したりするのが好き」と話す。

事業所では、主に心の病などを抱える人が日中を過ごす。通所者の背景はひきこもりやいじめ、ストレスなどさまざまだ。

女性は約15年前、統合失調症になった。原因は分からない。家族関係で悩んではいた。仕事も辞めざるを得ず、発症時から肉親と疎遠になり、生活保護を受給しながら1人暮らしをしていた。その後、病状が悪化して入院。自立した生活は難しく、病院の勧めで現在はグループホームに入所している。

女性はホームから日中の居場所として同事業所を紹介され、週4回ほど通う。女性は「1人での生活は大変だった」と振り返る。

現在の孤独・孤立問題について、事業所の石川美恵子施設長は、人間関係の希薄化や個人情報保護の高まりなどで「問題が見えにくくなっている」と、介入の難しさを指摘する。さらに、単身者だけでなく、家族全体が地域から孤立していることも多いとして、「家族丸ごとを救うには福祉だけでなく、教育や行政などのネットワークづくりが欠かせない。何より縦割り行政の打破が必要」と強調する。

事業所に通う女性のケースは、病院や施設などの連携がうまくいったと言える。石川施設長は「本当に困っている人は相談窓口にも来られない。SOSを出せない人の声をどう拾うか、最終的には支援者の姿勢が問われる」と人材育成の重要性を説く。

コロナ禍では密を避けるため人間関係が閉ざされがちとなり、以前から問題視されていた「孤独・孤立」が浮き彫りになった。対策が急務として、政府も6月に経済財政運営の指針「骨太方針」に孤独・孤立問題を盛り込んだ。

政府は全国の実態調査などを通し、官民連携による取り組みを進めると強調する。衆院選でも各党が公約に並べ、支援団体への助成や国を挙げた政策実現を訴えている。



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