新型コロナ まん延防止全面解除 通常営業「ようやく」 茨城県内飲食・宿泊
■「県民割」再開に期待
新型コロナウイルス感染症対策のため茨城県を含む18都道府県に適用されていたまん延防止等重点措置が22日、約2カ月半ぶりに全面解除となった。朝から降り続いた雪が残る中、県内の飲食店ではようやく夜間の通常営業が始まったほか、旅行支援事業の県民割も再スタートを切り、飲食や宿泊業界は胸をなで下ろす。一方、県内の感染者数は依然として高止まりが続いており、先行きは見通せない。
▼問い合わせ
水戸市大工町の「割烹(かっぽう)魚政」には午後5時の開店から程なくして、当日の空席の問い合わせや予約の電話が入り始めた。この日はあいにくの雪模様。予約のキャンセルもあったが、女将(おかみ)の田中満美さん(53)は「暇な時は電話もない。やっぱり電話があるとうれしい」と表情を緩めた。
例年だと歓送迎会の書き入れ時だが企業や団体の宴会は減少し、人数も2、3人の少人数がほとんど。重点措置の期間中は家族の発熱を理由にした予約のキャンセルもあった。
19日からの3連休は偕楽園の梅の見頃が重なり、看板料理のあんこう鍋目当ての観光客でほぼ満席になった。重点措置の解除を心待ちにしていた常連客も少なくない。田中さんは「感染状況が落ち着けば(客足回復が)期待できる。安心してゆっくり召し上がれる環境づくりを今後も徹底したい」と話した。
▼回復に時間
つくば市内の飲食店「赤から つくば研究学園店」は休業明けの22日に通常営業を再開した。フランチャイズ経営するプロスティ(同市)の男沢直人専務は「本格的な回復には1~2カ月かかる。大型連休ごろには盛り返せればいいが」と表情を曇らせる。
同社は県内外4店舗を経営。1月27日の発令から通常より3時間短い午後8時までの時短営業をしたが、感染拡大を受け「従業員の安全を優先」し、2月上旬から休業した。売り上げは前年比で半分程度と苦しい状況が続き、休業の協力金で経営を維持している。
肉や油などの値上げが追い打ちをかける中、男沢専務は「原料高は厳しい。酒類提供にこだわらず、小グループや家族など客層に合わせて効率的な経営をできれば」と見据えた。
▼客足伸びず
年明けからの流行「第6波」による感染拡大で事業を停止していた茨城県の県民割「いば旅あんしん割」は、重点措置が解除となった22日に事業を再開した。
「1月や2月に比べると、徐々に予約が増えてきた」。大洗ホテル(大洗町磯浜町)を運営するIHSの竹内順一社長は、県民割再開に期待を寄せる。ただ、県内感染者数が高止まり傾向にある上、今回の県民割の対象期間は31日までの10日間と短く、客足は「想定より伸び悩む」。
4月以降の県民割について県観光物産課は「国の補助金が決まり次第」と延長も示唆。竹内社長は「この2年間、財務的に厳しい状況が続いてきた。来年度はしっかり利益を上げていきたい」と期待を寄せる。
日立市十王町の国民宿舎「鵜の岬」では春休み需要も後押しとなり、3月以降の客室稼働率は回復基調にある。宇佐美泰重支配人は政府の観光支援策「Go To トラベル」の再開も視野に、「しっかり受け入れ体制を整えておきたい」と意気込んだ。(綿引正雄、前島智仁、長洲光司)
■「警戒緩めないで」 対策継続呼び掛け 県医師会長
県医師会の鈴木邦彦会長は22日の定例会見で、政府が茨城県を含む18都道府県に適用していた、新型コロナウイルスのまん延防止等重点措置を21日で解除したことを受け、県民に「警戒を緩めず、基本的な感染防止策は継続してほしい」と呼び掛けた。
22日現在、直近7日間を平均した県内の1日当たりの新規感染者数は1382.4人で、前週と同程度で推移している。
鈴木会長は県内の感染状況について「ピークは過ぎたが、減少は緩やかで高止まりが続いている」と指摘し、「高齢者の感染が減る一方、全体の4割近くを占める10代以下が増えている」と述べた。
今後の見通しでは「都内の感染状況が改善しており、同様の傾向をたどる茨城県もいずれ減るだろう」と言及。マスクの着用や3密回避などの感染対策の徹底を呼び掛け、「できるだけ早く収束させるため3回目のワクチン接種もお願いしたい」と語った。