政府実証ツアー、茨城県に 好評「安全伝えたい」 訪日観光再開へ一歩
政府の訪日観光実証事業の参加者が26日、茨城県の観光地5カ所を訪問し、インバウンド(訪日客)受け入れ再開に向け一歩を踏み出した。政府は同日、来月からの訪日客受け入れ再開を表明。新型コロナウイルス感染拡大防止策など、事業を通じ課題を検証する。この日の参加者からは、「安全に旅行できる」「茨城ツアーをつくりたい」などとおおむね好評を得た。県は事業を好機と捉え、県内観光地の魅力を伝え需要回復の足掛かりにしたい考えだ。
事業は新型コロナワクチン3回接種などを条件に、4カ国の旅行会社関係者ら計約50人が来日。15組に分かれ、12県の観光地を旅行する。茨城県には米国ハワイからの4人が25~30日の5泊6日、タイからの4人が26~30日の4泊5日の日程で、それぞれ茨城県や栃木、千葉の両県を巡る。
ハワイの4人はこの日、茨城県内を周遊し、訪日客に人気の高かった竜神大吊橋(常陸太田市)や袋田の滝(大子町)、那珂湊おさかな市場(ひたちなか市)などを訪れた。
最初に到着した酒列磯前神社(同)では、現地の旅行会社オーナー、ピーター・コバヤシさん(65)が「日本は感染予防対策がしっかり取られている」と受け止めた上で、「安全に旅行できることを現地に伝えたい」と話した。
ツアー商品作成を担当するJTBホノルル支店のクリストファー・リーさん(57)は、2019年に茨城を訪れた際に、メロンや干し芋の味が気に入ったという。今回も「茨城を紹介するツアーをつくりたい」と意欲的だった。
日本の旅行会社の添乗員は、参加者や観光地の感染防止対策を確認し、参加者にマスク着用を求めた。
県国際観光課によると、茨城県の外国人宿泊者数は、18年に最多の25万4千人を記録。19年は21万7千人、コロナ禍の始まった20年は5万3千人だった。茨城県周遊ツアーは、主に東南アジアの客が伸びていたが、コロナが感染拡大した20年4月以降、茨城空港(小美玉市)の国際線運休などの影響でゼロが続く。
同課は今回の実証事業を通じ、県内観光地への訪問再開を期待。外国人宿泊者数26万人を25年までに達成することを目標に掲げる。
県は訪日客が途絶えて以降も県内自治体や観光協会と連携し、在日台湾人を対象としたモニターツアーをはじめ、10言語に対応した観光サイト、案内板の多言語化などの施策を進めていた。20年4月からは、海外在住のフェイスブック利用者に年代や好みに応じた情報を広告で発信する「デジタルマーケティング」も展開してきた。
同課の幡谷佐智子課長は「いよいよ受け入れが始まる。今後は海外の旅行会社に情報を伝え、茨城を訪問するツアーを作成してもらえるようアピールしたい」と語った。