《解説》参院選茨城選挙区 世代交代、構図変わらず
■求められる民意の受け皿
10日投開票の参院選茨城選挙区(改選数2)は、自民党と旧民主党系で長年分け合ってきた「指定席」を今回も維持する結果となった。1995年以降、10回連続だ。この構図は、投票によって選択されたことになる。同時に投票率の低さも「維持」された。政党や候補者が民意の真の「受け皿」となっているのか、冷静に見つめ直すことが必要だろう。
今回、自民の岡田広氏(75)と立憲民主の郡司彰氏(72)=ともに当選4回=の現職2人が昨年、不出馬を表明し、久しぶりの世代交代選挙となった。ほかの勢力にも好機となる中、新人8人が立候補したが、結果的に従来の構図は変わらなかった。
自民は、県議や国会議員秘書といった経験が期待される加藤明良氏(54)を擁立し、「保守王国」の組織力で手堅く1議席を取った。旧民主系の候補者選びが難航する中、自民県連内でも2議席独占を狙う「2人擁立」を望む声が一部であった。票割りの難しさなどから確実な道を選んだ。仮に自民が2人擁立したら、どのような参院選になったのだろう。もっと活発な選挙戦となったかもしれない。
2議席目は、連合茨城が擁立した無所属新人の堂込麻紀子氏(46)が勝ち取った。立憲民主と国民民主が推薦し、連合茨城と「2党1団体」が一本化される中での立候補でも、「無所属」の看板は付いて回った。今後、国政の場でどのような立ち位置となっていくのか、大いに注目される。
両党は今回、候補者公募を実施したものの、独自候補の擁立を断念した。国政の場では隙間風が吹く中、双方の支持母体である連合からの候補で3者がまとまった。選挙戦では、物価高騰対策が大きな争点の一つとなった。結果的に組織力で勝利しつつも、全国政党を狙う維新に足元を脅かされたのが票数からうかがえる。
選挙戦最終盤の8日、演説中の安倍晋三元首相が銃撃され、死亡した。暴力は決して許されず、民主主義の根幹を揺るがす行為だ。各陣営は街頭演説をいったん控え、最終日には再び街頭に戻るなど、異例の選挙戦になった。
投票は、国の在り方を考え、政治の有りようを変える一歩だ。今回も低投票率を大きく脱することはなかった。選挙権の行使は有権者一人一人の問題であり、政治離れの責任は政治にあると言える。
長引くコロナ禍からの明確な出口戦略は見えず、ロシアによるウクライナ侵攻が世界の安全や経済を脅かして先行きも見通せない。こうした多くの課題に対する各党の論戦は、民意の受け皿として十分だったか、選挙後も注視する必要がある。