「動く市役所」運用実験 茨城・笠間で21日まで 車両出張
■相談や申請、市民負担軽減
少子高齢化に伴う人口減少を受け、移動の利便性向上やデジタルデバイド(情報格差)の解消が求められる中、茨城県笠間市はオンラインによる行政手続きに対応する専用車両の運用実験を実施している。「動く市役所」と銘打ち、利用者が指定する場所に車両を出向かせ、市職員との双方向による相談や申請支援などを行う。実験は21日までの5日間で、利用者の移動負担の軽減効果や課題などを探る。
実験は、市が日立製作所(東京)や関連の日立システムズ(同)と連携し、日立製作所の「汎用(はんよう)デジタル窓口サービス」を採用。また、両社の協力企業でモビリティーサービスを展開する「MONET Technologies」(同)の「マルチタスク車両」を使用する。
汎用デジタル窓口サービスは、市町村の役所から離れた場所で、オンラインで自治体職員の顔を見ながら、各種申請手続きや相談業務などに対応する。マルチタスク車両は、トヨタのハイエースワゴン(定員10人)を改装したもので、室内には折り畳み式テーブル3脚(最大)、24インチモニターなどを備える。
実験期間中、車両は市内の大型商業施設や個人宅などに出張。利用者は、テーブル上に設置されたカメラを使って文書などを指し示しながら、マイナンバーカードや介護関係の申請、健康相談などを行う。
17日午前、車両は市ともべ保育所(同市平町)に出向き、保育士の相談業務に対応した。園児の育成指導方法を巡り、保育士は市こども育成支援センター(同市美原3丁目)の職員とオンラインで相談した。
サービスを体験した女性保育士(47)は「初めてで緊張したが、センターの方と実際に対面するのと同じ感覚で相談できた。(保護者の許可を得た上で)事前に撮影した園児の1日の映像を詳しく見てもらうことができ、実情をきちんと伝えられたと思う」と振り返った。
市企画政策課は「民間企業の力を借りたデジタル窓口サービスの有効性とともに、市民サービスの質の向上や市役所側の業務の効率性などを確認しながら進めていきたい」と話した。