《茨城新聞論説》新県議決まる 大局的な判断と行動力を
茨城県議会の新たな顔触れが決まった。県民の代表として今後4年間の活動に期待したい。県民から直接選挙で選任された議員によって構成される県議会は、知事とともに二元代表制の一翼を担う存在である。その活動は県民生活とも直結することが多いだけに真摯(しんし)な議論を重ねることが重要だ。
県議会の役割を考えた時、基本条例に記載されている「知事等の事務の執行について、監視及び評価を行うこと」や「県政の課題に関し、政策の立案及び提言を行うこと」は県議会の重要な役割である。後者については県議会自身による周知活動の効果もあり、その重要性が県民に広く認識されるようになった。議員提案政策条例数で全国トップレベルである茨城県議会は、政策立案についての熱意も評価されている。
知事などの執行機関に対するチェック機能を果たそうとする意欲も感じられる。その一つが県のコロナウイルス対策を検証し、提言につなげたことに表れている。
一方で、議会の基本的な権能である、予算案などの議決で県の意思決定を行うことについては、具体的に議会でどのような議論が執行部との間でなされているのか、外からは見えにくい。
例えば、アクアワールド大洗水族館の展示施設の予算が減額修正された時のように、公の場でさまざまな議論をされれば、県民も問題を認識しやすいが、最終的に執行部の原案通り可決される割合が高い現状では、人々の関心が向きやすいとは言いにくい。従来の県議会だよりに加え、ユーチューブでのライブ放送や、日曜議会、高校生の傍聴推進など県民に知ってもらうための県議会の努力は高く評価できるが、さらなる施策も求められる。
議員は、選出された選挙区を代表する立場から、その選挙区、特に出身市町村の地域振興に貢献しようと考えて行動することが多い。それは当然であり、期待されていることでもある。例えば県道整備などをはじめとする県の事業や予算の配分を特定の地域で手厚く行う必要性を訴え、執行部に提案することなどだ。
一方で、議員は地域振興、医療や防災など県民の安全の確保、教育・文化の向上など県が行う全てのことについて、県全体の立場から検討・議論し、判断する立場にもある。
県の予算には限りがある。道路でも、地元要望のある道路を同時に全て整備することはできない。このためさまざまな政策の県全体にとっての必要性や事業の優先順位、予算の配分などを県全体という高い観点から判断することが議員には求められる。
そのためには、立場によりさまざまな議員の意見を、最終的には採決で議会の意思として集約することになるが、その過程で不可欠なのが議員同士の議論である。しかし、与党会派が大きな割合を占める茨城県議会においては、議会という公開の場で議論される前に与党内での議論や調整により、実質的に採決結果がだいたい予想できることが多い。このため県議会では議員相互の討議の様子が県民にはほとんど見えないのが実情だ。県議会のさらなる活性化のためにも検討すべき課題ではないだろうか。
議員には多くの知見に基づいて議論し、大局的な判断と行動力を期待したい。