「イノシシ前線」南下中 茨城・潮来や稲敷、県境で増加
茨城県鹿行や県南地域で、イノシシの捕獲頭数が増加している。2021年度に県内で捕獲されたイノシシは豚熱(CSF)などの影響で前年度より大幅に減少したが、捕獲される地域は、数年前まで目撃情報がなかった潮来市や稲敷市などで増加、生息域は県境にまで達している。従来のすみかからの南下や、川沿いに移動している可能性もあり、関係団体が捕獲目標数を増やすなど対策を強化している。
県環境政策課のまとめによると、県内で21年度に捕獲されたイノシシは4805頭。20年度の1万1963頭から大幅に減少した。減少の理由は「豚熱の影響が考えられる」(同課)が、捕獲される地域は拡大傾向が続いているという。
茨城、千葉の県境にある潮来市は、数年前までイノシシの生息は確認されていなかった。だが、市によると、市内では19年ごろからイノシシの目撃情報が増え、20年度に有害捕獲を始めた。同年度の捕獲頭数はゼロだったものの、21年度は3頭、22年度は体長151センチ、体重120キロの大物を含む9頭に増加した。
イノシシ捕獲に協力する潮来猟友会の方波見豊次会長は「元々、私たちの猟はカモやキジが専門。イノシシは大子や筑波山方面のことで、潮来に来るとは思わなかった」と語る。同会メンバー11人のうち、イノシシ駆除で常時動けるのは4人程度。奥村正副会長は「人手は全く足りないが、被害を考えると、やるしかないという状況」と明かした。
同市と隣接する稲敷市は、さらに深刻な状況となっている。市環境課によると、市内での捕獲記録は15年度以前はほとんど例がなかったが、同市内の有害捕獲頭数は20年度が46頭、21年度は119頭、22年度には212頭と「倍々」ペースで推移している。
市などは、有害捕獲にかける人数を増やし、20年度には電気柵の設置費用の3分の2を補助(上限12万円)する制度の運用を開始。市担当者は「人がいる場所にも出没してきており、学校を含む行政全体で注意喚起などの活動をしていきたい」と話した。
県環境政策課は「イノシシの適正管理の視点から、生息域の拡大や頭数増加を早期に押さえ込めるようにしたい」とした上で、「狩猟免許を持っている方は大半が60代以上。セミナーや研修会などを通して狩猟の担い手を育成していく」と述べた。