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改正法成立 精神的DV、保護対象に 支援者、実効性懸念も

過去のDV被害を語る女性=県内
過去のDV被害を語る女性=県内


改正ドメスティックバイオレンス(DV)防止法が21日閉会した通常国会で成立し、2024年4月から言葉や態度で相手を追い詰める「精神的DV」が裁判所の保護命令の対象になる。現行法は生命や身体に関するDVが保護命令の対象で、法改正で保護対象は拡大されるが、支援者からは実効性を懸念する声が上がる。

内閣府によると、24時間対応の相談窓口事業で受け付けた2021年度後期の相談1万9千件余りのうち、約6割が精神的DVとみられる行為を含む内容だった。

現行法では、裁判所が被害者に近づくことなどを禁止する保護命令の対象は身体的暴力と「生命や身体に対する脅迫」のみ。精神的DVを受けた人の後ろ盾となる法律はなかった。

改正法は、保護命令の対象を精神的DVにも拡大。接近禁止命令の期間を現行の6カ月から1年に変更するほか、命令に違反した場合の厳罰化も盛り込んだ。

法改正で救われる被害者は増えるのか。DVを受けた女性の支援などを行うNPO法人ウィメンズネット「らいず」(水戸市)の三富和代代表理事は、「一歩前進した」と歓迎する一方、「精神的DVは身体的DVと違って目に見えず、数値でも表せない」と被害を証明するハードルの高さに懸念を示す。

また、今回の法改正で性的DVが保護命令の対象に加わらなかったことについては「これからの大きな課題」と指摘。「制度が実態に追い付いていない。全てのDVに対応できるように、きめ細やかな法制度に変えていく必要がある」と話した。

■暴言、交友関係制限・・・ 「存在価値、否定された」 茨城県内被害女性

「存在価値をとことん否定され、自分自身が矮小(わいしょう)化されていくような感覚になった」。かつて元夫にDVを受けた茨城県内の60代女性は、当時をそう振り返る。

元夫は女性が長男を妊娠したのを機に、意に沿わないことがあると激高するようになった。

「お前の命はゴキブリほどの価値もない」

そんな暴言を吐かれ、交友関係も制限される日々。精神的DVだけでなく、殴る蹴るなどの身体的DVや性的DVなどにも苦しんだ。

長男が小学1年生の時に離婚してからは、自宅や職場に毎日のように電話がかかってきた。電話に出ないと深夜に家までやって来て、「子どもが連れ去られないか、家に火が付けられないかと恐怖だった」。ストーカー行為は、元夫が亡くなるまで、10年以上続いた。

今回の法改正は進展と捉えつつ、「当事者は保護命令が出たところで安心はできない」。恐怖から解放される難しさは身をもって知っている。

女性は自身の体験を語る場があったことで、被害を思い出して苦しくなることはなくなったという。「語る行為は治癒につながる。自助グループなど、安心して自分の体験を語れる場をつくることが大切」と訴える。



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