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シルバーリハビリ体操20年、拡大進む 茨城県内外 要介護者も視野

シルバーリハビリ体操の教室で指導士(右)のアドバイスを受けながら体を動かす参加者=2日、水戸市の見川市民センター
シルバーリハビリ体操の教室で指導士(右)のアドバイスを受けながら体を動かす参加者=2日、水戸市の見川市民センター


茨城県独自の介護予防体操「シルバーリハビリ体操(シルリハ)」が普及活動の開始から20年目を迎え、茨城県内外で一層広がりを見せている。指導士は累計1万人を超え、教室開催は茨城県内全44市町村のほか、県外の15道県48市町村にも拡大。指導士養成事業を展開する茨城県立健康プラザ(水戸市)はさらなる発展に向け、要介護者も教室に通える体制づくりを視野に入れる。

■指導通じて地域貢献

「体をゆっくり前に倒します。股関節の柔軟性に効果があります」

2日、水戸市の見川市民センターに60~80代の男女17人が集い、指導士のアドバイスでシルリハに取り組んでいた。あぐらをかき、身をかがめる、あおむけで膝と上半身を逆方向にひねるなど、座ったまま、寝たままでストレッチする。

シルリハは体の機能が衰えてもでき、道具もいらない。指導士が効果を説明するため、参加者の意欲も生まれる。立って行う体操を含め、全92種類に上る。

教室への参加がきっかけで、2017年に指導士となった池田裕子さん(70)は「高齢者の体操というイメージで抵抗があったが、やってみたら、本格的で効果があると感じた」と明かす。指導を通して健康維持や地域貢献につながり、やりがいがあるという。

参加者の斎藤トモイさん(80)は「知り合いがたくさんできた。一緒に体を動かし、話すのが一番の楽しみ」と笑顔。高齢者が積極的に家の外に出るきっかけにもなっている。

■理学療法士会が協力

シルリハは、県立健康プラザ管理者でリハビリ専門医の大田仁史さん(87)が、理学療法士などが治療に用いる動作学・障害学に基づいて考案。介護予防策として県が04年度に指導士養成のモデル事業を行い、翌年度から本格開始した。

県立健康プラザによると、3級指導士の場合、5日間の受講で取得が可能。毎年600人前後増加し、県内全44市町村で計1万39人(3月1日時点)まで増えた。各市町村に指導士会が組織され、水戸市では介護予防として中学校区単位の教室を委託されるなど、行政と連携するケースも多い。

指導士の増加に伴い、県内の教室や参加者も増えている。コロナ禍前の18年度は教室開催は延べ4万3816回、住民参加は延べ62万5384人に上り、ともに過去最多となった。

県外の15道県48市町村にも普及拡大している(4月1日時点)。実用性に着目した日本理学療法士会の協力で、県外の理学療法士が指導士を養成する講師の資格を取るなどし、広がりが加速した。岩手県では理想的な取り組みとして、15年度から指導士養成事業を始動。14市町村で指導士がアドバイスする。

■社会との接点持って

教室の参加者は現在、介護の必要がない人が多い。社会の高齢化が進む中、大田さんは「要介護の人にも目を向けていく時期」と話し、介護予防を担うシルリハの新たな展開を視野に入れる。

要介護者でも人が集う教室に来て仲間と一緒に活動し、社会との接点を失わないことが一つの狙い。座ったままや寝たままできる特徴を生かし、「要介護度を上げない」ようにするのも大きな目的だ。

ただ、家から教室までの移動、教室内での支援は容易ではない。県理学療法士会などとの連携や、要介護者向けの教室を絞り込むなど、「サポート体制をしっかりと構築していく必要がある」と課題を示す。

「高齢者が最後まで生き生きと暮らせる社会こそ、幸せな社会」と大田さん。シルリハは今後も高齢化社会で重要な役割を担う。



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