イノシシ作物被害7割減 茨城県内5年で 対策強化が奏功
茨城県内の2022年度のイノシシによる農作物被害額は前年から1千万円減の約5200万円で、ピークの5年前から7割減となったことが10日、県のまとめで分かった。県はイノシシ対策条例を18年に施行後、捕獲の強化や侵入防止柵の設置などを促進しており、対策強化が被害額の大幅減につながったとみている。
県農村計画課によると、農作物の被害額(速報値)は、稲やイモ類を中心に約5200万円で、前年から1千万円減った。減少は5年連続。ピーク時の17年度の約1億5400万円から約7割減少した。
被害が確認された市町村は、水戸市や大子町をはじめ、これまで捕獲の報告がない牛久市など計28市町に上った。
県内のイノシシは、筑波山周辺を中心に県全域で約4万頭(19年時点)が生息するとされる。「近年は生息地が広がり、県南や県西地区でも増えている」(農村計画課)
農作物の被害は、農家の営農意欲の減退や耕作放棄地の拡大につながることから、県は18年3月、イノシシ対策条例を施行。自治体に侵入防止柵の設置費用や箱わななどの購入費を助成し、農作物の被害防止に力を入れてきた。情報通信技術(ICT)の活用や、捕獲者向けの研修を充実させるなど人材育成に力を入れている。近年は豚熱(CSF)の感染拡大により、個体数も減少しているとみられている。
被害額の内訳では、稲が約2200万円と全体の約4割を占めた。次いで、サツマイモやジャガイモなどイモ類が約1300万円。レンコンやカボチャなど野菜が約860万円だった。
同課は「イノシシは稲の穂を好んで食べる。稲穂が出る夏から収穫期の秋に被害が多く出る」とし、「においが付いてしまい、穂が実っても収穫できないことがある」と、対策の必要性を指摘する。
県政運営の基本方針となる県総合計画(22~25年度)では、農産物被害額を4800万円まで減少することを目標に掲げている。同課の関田健治課長補佐は「特効薬はない。引き続き捕獲強化や人材育成を進める」と話した。