茨城県内の太陽光発電所 銅線盗難被害相次ぐ 事業者「有効策ない」
茨城県内の太陽光発電所で、銅線ケーブルが盗まれる被害が相次いでいる。銅の取引価格がここ数年で高騰したことなどを背景に、発電所の盗難被害は金属盗全体のほぼ半数を占めるまでに増加。事業者が防犯カメラの設置などで対策を講じても被害に遭う状況が続いており、有効な対策が見いだせていない。
「費用対効果に見合った防犯対策が見つからない」。県央地域で発電所を運営する事業者は困り顔で語った。この事業者では今年5月、防犯対策を整えていたにもかかわらず、長さ約1600メートルの銅線ケーブル(約160万円相当)が窃盗グループに盗まれた。送電ケーブル切断による売電収入の減少もあり、大きな痛手になったという。
県警によると、小美玉市の太陽光発電所でも昨年12月末、長さ約850メートルの銅線ケーブル(約550万円相当)が盗まれる事件があったほか、行方市でも今年5月、銅線ケーブル約39メートルが盗まれた。
茨城県は2020~22年の金属盗の年間認知件数が全国ワースト。今年1~6月の認知件数も全国ワーストの1181件。このうち、太陽光発電所での被害は567件(前年同期比312件増)と全体の48%を占めたという。
被害増の背景とみられる金属の価格高騰は顕著だ。日本電線工業会のまとめによると、銅1キロ当たりの平均価格は20年3月の約615円から、今年3月には約1218円と大幅に増加。捜査関係者は「犯行グループにとっては(発電所の銅線ケーブルは)地面に現金が落ちているようなもの」と指摘する。
県警によると、発電所の一般的な防犯対策は、機械警備の導入や防犯カメラの設置など。しかし、発電所は市街地から距離のある遊休農地や山林などを伐採して設置されるケースが多い。被害を認知してから警察や警備員が到着するまでに犯人に逃げられ、未然防止は難しいとみられる。
相次ぐ発電所の窃盗被害に、大手損保会社の一部には、発電事業者との保険契約から盗難被害を対象外にする動きも出ており、保険代理業者から「今後、損保会社の多くが追随するのでは」と予測する声が上がっている。