介護人材、実習生に期待 茨城県が資格取得へ支援強化
介護現場の人材を確保しようと、茨城県は外国人技能実習生などが国家資格「介護福祉士」を取得できるよう支援を強化している。日本語能力の向上や試験対策を後押し。合格すれば長期在留も可能となる。超高齢化社会を見据え、県は「現場は待ったなし。人材確保に努める」と幅広い対策に取り組む。
■学習サポート
「どう勉強したらいいか分からなかったので、とても助かる」。鹿嶋市内の特別養護老人ホームで働くベトナム国籍のチュオン・ゴック・チャムさん(28)はほほ笑んだ。
来日間もない実習生などを対象とした県の「ビギナーズ研修」。水戸市内で10月に開かれ、介護福祉士の資格試験の特徴や何をどう学ぶべきかなど、試験対策の講義が行われた。
年間全3回。2019年度に始め、22年度まで4年間で延べ100人近くが参加した。研修は介護関連の専門用語など試験に必要な日本語習得にも注力する。
県は22年度、日常の会話・場面をほぼ理解できる日本語能力試験「N3」以上の実習生などを対象に、介護福祉士の資格取得に必要なレベルの日本語学習のサポートを始めた。受け入れ施設に講師を派遣するほか、日本語学校への通学費用を支援。今春、インドネシア人の合格者2人を輩出した。
■不足に危機感
介護現場の人手不足は深刻さを増す。
県福祉政策課によると、21年度の県内介護職員は約4万3700人で、需要に対して800人近く不足した。25年度には約5千人上回る約4万9千人の需要が見込まれている。新型コロナウイルス対策の緩和に伴い、飲食業界などとの人材を巡る競合が激しくなり、県は危機感を抱く。
人手不足は全国的な悩みだ。介護労働安定センターが22年度に行った調査で、介護事業所4千超のうち、7割で介護職の「不足感」を持っていることが分かった。
こうした状況の中、県は外国人材に注目。介護福祉士の資格取得の支援に力を入れ始めた。技能実習生の在留期間は最長5年のため、長期的な介護人材としては望めない。しかし、同資格を有する介護職となれば在留資格が永続的に更新でき、茨城県での定着が期待できるとみる。
■工夫で解消へ
これまでも県は多角的に人材確保に努めてきた。一つは入門資格の「初任者研修」の取得をサポート。修了までの2~3カ月間、介護現場で働いてもらい、研修期間中の受講費用などを県が負担することで直接雇用に結び付けている。
このほか、県内の介護職場での5年間勤務を条件とした専門学校の学費貸付▽県福祉人材センターでの介護分野の就労マッチング▽現役の介護職が小中学生にやりがいなどを伝える「福祉キャラバン隊」-などに取り組んでいる。
同課の担当者は「介護職の確保は待ったなしの状況。あらゆる工夫をしながら人手不足の解消に努めていきたい」と話し、人材確保に力を入れる。