災害備え、外国人支援 茨城県内自治体や市民団体 多言語情報や通訳
河川氾濫など自然災害が頻発化する中、茨城県内に住む外国人の逃げ遅れを防ごうと支援の動きが広がる。自治体や市民団体は多言語による情報発信、避難所で通訳を担うため研修するなど言葉の壁を越えて備えを強化。外国人コミュニティー内で速やかに情報を伝達させる取り組みも進む。
「日本語は話せますか」「何か困っていることはないですか」。市町村の職員が尋ねると、テントから顔を出した避難者役の外国人が「寒いです。上着欲しいです」などと片言の日本語で答えた。
災害時の避難を想定した外国人支援研修が21日、水戸市緑町のアダストリアみとアリーナで開かれた。県内14市町村の担当職員と、水戸市やひたちなか市に住む在留外国人18人が参加した。
災害が発生した際、外国人を支援する拠点として、国は「災害多言語支援センター」の設置を推奨している。日本語が分からない外国人のため、多言語での避難情報の発信や避難所での通訳を担う。
職員らは地図を片手に、各避難所にいる外国人の国籍や人数を確認し、通訳の適正配置や多言語チラシの作成などを実践形式で学んだ。外国人に日本語が通じなければ英語で話しかけたり、スマートフォンの翻訳アプリを利用したりした。
水戸市に住んで3カ月というパキスタン人のシィディッキ・イブラヒムさん(28)は「日本語まだよく分からない。災害の時、不安」と話した。
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新型コロナウイルスの制限緩和に伴い、茨城県でも在留外国人が増えている。
2022年末時点で約8万1400人に上り、人数は全国10位。前年同月比で1万人以上増えている。市町村別ではつくば市が最も多く、次いで常総市、土浦市と県南地域が多い。国籍別ではベトナム、中国、フィリピン3カ国で全体の半分を占める。
在留外国人の増加は全国的な傾向という。県女性活躍・県民協働課は「新たな在留資格、特定技能による外国人労働者がコロナの制限緩和に伴って増えたのではないか」とみる。「今後も増加が見込まれ、避難情報の共有が欠かせない」とする。
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各団体で災害時の外国人支援に取り組む。
常総市で15年に発生した常総水害の際、NPO法人「茨城NPOセンター・コモンズ」(水戸市)は、外国人避難者向けに飲料水の配布場所などの情報を多言語に翻訳し、避難所で「瓦版」を発行した。
18年には10カ国の外国人13人で構成する「ピアサポーター」を設け、メンバーが属する外国人コミュニティーに防災関連をはじめ、福祉や税金に関する情報を発信している。
今年9月には外国人約50人を対象にした避難訓練を実施。横田能洋代表理事は「メンバーがキーパーソンとなり、正確な情報を口コミで広げてもらう」と仲間同士で情報を伝える仕組みについて話す。
水戸市国際交流協会も地域に住む外国人のリーダーを募集。外国人避難のボランティアとして期待する。「リーダーを中心に日頃から地域との関係を密にし、助け合いで対応できるよう進めている」(担当者)
県の担当者は「災害はいつ起こるか分からない。外国人の円滑な避難につながるように研修を続けたい」と話した。