消える街の書店 電子書籍に押され苦戦 茨城県内、10年間で27%減
茨城県内で新刊書籍を扱う書店の減少が止まらない。2013年6月に300以上あった店舗は、10年間で80以上が閉店。電子書籍の市場拡大など、実店舗を介さない消費形態が普及したことが要因とみられる。消える「街の本屋さん」。生き残りを模索する店主は切実な声を上げる。
日本出版インフラセンター(東京)によると、県内書店の店舗数は、今年6月現在で233店。2013年6月は319店だったが、10年間で27%に当たる86店が閉店した。昨年は9店が開店した一方、17店が閉店した。
こうした動きは全国的に進んでおり、10年間で約30%が閉店を余儀なくされた。今年1~10月では全国で少なくとも550店が閉店。3月には大型書店の先駆け、東京・八重洲ブックセンター本店が付近の再開発に伴い44年の営業を終了。28年完工予定の再開発ビルへの再出店を予定しているが、利用者から惜しむ声が上がった。
閉店が相次ぐ中でも、売り場面積が300坪以上の大型店は健闘しており、店舗数は横ばい。閉店が相次いでいるのは50坪未満の小規模店という。
こうした状況に、県内の書店経営者からは厳しい声が上がる。
鉾田市の「増子書店」店主、増子敬さん(52)は、がらんとした店内を見渡しながら「20年ほど前は、夕方になると学生たちであふれかえっていたのに」と寂しそうな表情を浮かべる。
増子さんによると、1990年代の街中には個人経営の書店が6~7店あったという。そのうち、現在、同市鉾田地区に残っているのは同店のみ。新書や辞書は売れなくなり、販売冊数はピーク時の約10%に落ち込んだという。
一方、電子書籍の市場規模は拡大傾向だ。全国出版協会・出版科学研究所(同)がまとめた昨年の推定販売金額は、紙の書籍が6・5%減だったのに対し、電子書籍は7・5%増えた。中でも、電子書籍は19年比で63・2%と大幅な伸びを示しており、コロナ禍を経て普及が進んだとみられる。
こうした状況に、増子さんは「(経営は)ギリギリの状態だが、できるうちは続けていきたい」と話した。