北茨城「御船祭」ユネスコ申請へ 無形文化遺産に 保存会「驚いた」「盛り上げたい」
国の文化審議会は18日、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の無形文化遺産「山・鉾・屋台行事」の対象に、茨城県北茨城市の伝統的祭り「常陸大津の御船祭(おふねまつり)」を追加申請する候補と決めた。関係省庁連絡会議を経て、来年3月末までにユネスコに提案書を提出。2025年11月の政府間委員会で審査される。
御船祭は、北茨城市大津町の佐波波地祇(さわわちぎ)神社の春季例大祭に行われる行事で、みこしを載せた大型の木造船が御船歌やおはやしに合わせて町内を巡行し、豊漁や海上安全を祈願する。船の巡行はソロバンと呼ばれる井桁状に組んだ木枠を路上に敷き、その上を左右に激しく揺らしながら豪快に滑らせる。現在は5年に1度の開催。
市によると、船の陸上渡御は全国でも珍しい。約300年前から伝わり、17年に国の重要無形民俗文化財に指定された。今年は新たな祭事船が完成。開催年である来年は5月2、3日に予定する。
追加登録への申請の候補となり、地元の「常陸大津の御船祭保存会」(山形義勝会長)では喜びの声が上がった。吉原国彦副会長(63)は「ユネスコの候補と知らされ驚いた」と喜び、鈴木平四郎副会長(69)は「来年は盛大な本祭も控えている。町ぐるみで盛り上げていきたい」と語った。
年明けから御船祭の準備が本格化する。祭りの当番町「大中」の頭取でもある高倉雅友副会長(57)は「コロナ禍で沈んでいた地域を祭りで活気付けたい。ユネスコの候補になったことをアピールし、一層力を入れたい」と意気込む。
豊田稔市長は「漁業で栄えた大津町に伝わる伝統的な祭りで、住民の絆を強める役割を果たしてきた。市全体の活性化につながることを切に願う」などとコメントを出した。
山・鉾・屋台行事は「京都祇園祭の山鉾(やまほこ)行事」「日立風流物」など33件で登録されている。追加申請は御船祭と「村上祭の屋台行事」(新潟)「放生津(ほうじょうづ)八幡宮祭の曳山(ひきやま)・築山行事」(富山)「大津祭の曳山行事」(滋賀)の4件。追加は試験的に審査件数制限の枠外とされ、25年の審査対象になる。