車内置き去り防げ 通学バスに乗降記録機 茨城・かすみがうら市、行方市
少子化による学校の統廃合で送迎バスの利用が広がる中、児童生徒の車内置き去りを防止する安全装置の導入が茨城県内で始まっている。かすみがうら市は11月、バス乗降時にICカードをカードリーダーにかざして乗降を記録する装置の運用を開始。行方市も9月からQRコードを使った同様のシステムを取り入れている。2022年に静岡県で起きた園児死亡事故を受け、学校関係者は「紙のリストや点呼も行い、二重三重の対策に当たっている」と神経を使っている。
▽違う場所で降車
かすみがうら市教委は11月、「スクールバス乗降管理システム」を使い始めた。同市では22年7月に小学1年の男子児童がバス内で寝過ごした後、本来降りるはずのバス停ではない場所で降車し、一時不明になる事案が発生した。市はこれを受け、2023年度の装置導入を図った。
市内では近年、学校統廃合を加速した結果、4校が送迎バスを導入し、小中学生の4分の1を超す計745人が使う(12月1日現在)。通学距離が小学生は2キロ以上、中学生は6キロ以上だと無料で利用できる。
市立千代田義務教育学校(同市上佐谷)は前期課程(小学1~6年生)の児童がバスを利用する。12月中旬の放課後、駐車場には計8台のバスが並び、児童が慣れた様子で装置にICカードをかざし、次々と乗り込んでいった。
▽学校PCで確認
乗降の記録はバスに付けたタブレット端末に表示され、教職員が学校のパソコンでも確認できる。指定場所以外で乗降しようとするとエラーが表示され、車内置き去りがあると運行が完了しない仕組みになっている。
約800万円で装置を導入した市教委は「乗り過ごしや車内置き去りを防ぎ、さらなる安全安心を目指す」(学校教育課)としている。
タブレット端末は取り外し可能で、バス側に特別な工事は必要ない。システム構築を委託された情報通信機器会社「ナカヨ」(東京都)の担当者は「かすみがうら市が初の導入例。学校統廃合で全国的にニーズがあると思われ、装置の使い勝手を良くしていきたい」と語る。
▽QRコード活用
静岡の死亡事故を受け、国は幼稚園や保育園の送迎バスで23年度、置き去り防止の安全装置設置を義務化した。小学校以上は義務化の対象ではないものの、県内では導入する自治体が他にも出始めた。
行方市は9月、QRコードを使った乗降管理システム「QRだれドコ」の運用を小中学校で始めた。
システムは、ソフトの企画などを手がけるフルティフル(静岡県浜松市)が開発。読み取り機にQRコードをかざすことで乗降を記録し、学校や市教委、運行事業者が確認できる。希望する保護者にメール配信も可能だ。23年度の予算は約200万円。
小中5校でバス利用者は約1100人。市教委学校教育課は、通信の不具合などを改善しながら装置の完成度を高めており、「行方に合った利用しやすいモデルを構築していきたい」(担当者)としている。