牛久沼越水、堤防高く 検討委 茨城県の方針案「妥当」
台風2号による大雨で住宅や水田が浸水した牛久沼(谷田川)の越水を巡り、地盤沈下した堤防全6カ所のかさ上げを行うなどとする茨城県の対策方針案が25日、固まった。有識者でつくる牛久沼越水対策検討委員会が方針案を「妥当」と判断した。河川監視カメラ設置などの監視・点検体制の強化も進める。検討委からの提言を経て、本年度中に正式に方針が決まる。
検討委は牛久沼の越水と八間堰(ぜき)工事との因果関係を明らかにし、今後の対策を講じる目的で8月に初めて開催。11月には、越水した3カ所を含む計6カ所で、地盤変動により堤防が最大68~29センチ沈下していたことが越水要因と結論付けていた。
この日の検討委では、県の越水対策として、地盤沈下で高さが不足していた堤防6カ所をかさ上げする方針を説明。今後の地盤沈下も見据え、牛久沼で想定される最高水位を上回る堤防高の確保も提案した。流域治水促進のため、上流のつくば市側で調整池や貯留浸透施設の整備を進める。
国と県が3カ所に設置する既存の水位計に加え、八間堰にも新たに1基設置する。水位の状況を「目で見て把握しやすい」(県担当者)河川監視カメラも4基新設する。越水を検知するセンサーの設置や、効率的な事前放流など八間堰水門の運用ルール見直しも検討していく。
堤防の地盤沈下への備えは、上空から精密な地表データが得られるレーザー測量で、定期的に点検する。住宅地に近いなど治水上、重要な場所には、沈下計の設置も検討する。
検討委は冒頭を除き、非公開で行われた。会合後、県の対策案に委員長の武若聡筑波大教授は「妥当な方針内容。(地盤沈下など)これまで抜け落ちていた観点も入っているほか、流域治水の考え方も積極に盛り込まれている」と評価。8月以降の議論を踏まえた提言書を年度内に県へ提出する。
堤防をかさ上げする時期について、県河川課は「早ければ来年度以降、順次取り組んでいきたい」とした。
牛久沼では6月2、3両日に降った記録的な大雨に伴い、龍ケ崎市とつくば市の計3カ所で越水した。八間堰周辺では住宅などの床上浸水が2件、床下浸水が20件の被害に見舞われたほか、両市とつくばみらい市の3市にまたがる水田で計約200ヘクタールが水に漬かる被害が出た。