液状化、広範囲で被害 防災科研・研究員の調査進む 能登地震1カ月 茨城県埋め立て地に警鐘
能登半島地震で、防災科学技術研究所(茨城県つくば市)の先名重樹主任専門研究員が、被災地の液状化調査を進めている。今回の地震は震源から離れた場所でも激しい被害が出ているのが特徴。日本海側で特に発達する砂丘などが被害拡大の要因とみられ、「茨城県でも砂丘や旧河道を埋め立てたような土地で被害が大きくなりやすい」と警鐘を鳴らす。
先名氏は帰省先の富山県で被災。1月4日に被害調査を始め、自治体が発信する情報や報道、交流サイト(SNS)で投稿された映像などを基に、被害報告のあった地点を地図に落とし込み、過去の液状化被害の履歴を記した地図も活用して調査区域を選定。同5日から現地調査に入った。
車にカメラを載せ、福井県から新潟県にわたり被災地約2000キロを走行。映像に記録された位置情報を活用し、被害範囲の確定に役立てた。液状化被害があったと疑われる地域はほとんど訪れ、住民に聞き取り調査も実施した。現在は航空写真を画像解析した結果などと合わせ、被害の実態把握を進めている。被害の激しい石川県珠洲市など一部の未調査地域は、交通事情などが改善され次第、調査するという。
能登地震の特徴について、先名氏は被害範囲の広さを挙げる。震源から170キロ離れた新潟県新潟市などでも激しい液状化が確認されたことから、「熊本地震などと違い、震源から離れても被害が小さくない」と指摘した。
被害拡大の背景の一つは、日本海側で見られる特有の地形とみており、石川県や新潟県沿岸部などは、地下水位が高く砂地の地盤が広がっているため、弱い震度でも液状化が起こりやすいという。地震が続いた時間についても「液状化を引き起こすほど強い揺れが約30秒続いた。長く続くほど、地面は壊れていく」と話した。
粘土質の関東ローム層に覆われた茨城県は液状化しにくいとされるものの、埋め立て地や砂を埋めた干拓地は例外。2011年の東日本大震災では鹿行南部などで激しい液状化被害に見舞われた。鬼怒川の旧河道上にある地域なども液状化リスクが高く、「一度液状化した場所では再び起きやすい」と予測する。
先名氏は2月1日から、3回目となる現地調査に入り、能登半島北部などを回る予定。
今後、収集したデータなどを基に、地震の強さと液状化の発生確率に関する研究をまとめるという。他の自然災害に比べ発生頻度が低い地震の被害が忘れられないように「災害の記録を残し、伝えていきたい。今後の被害軽減につながればいい」と力を込める。
■液状化現象
地震によって地盤が強い衝撃を受け、支え合っていた土の粒子がバラバラになり、液体状になる現象。地表に水や砂が噴出したり、地盤が沈下したりする。緩い砂質で起こりやすく、海岸や湖沼の埋め立て地、河川敷、川沿いの低地で生じやすい。発生すれば、地表に砂が噴き出し、住宅の沈下や傾斜、道路の変形などの被害をもたらす。