鷹見泉石の晩年を映画に 来春公開へ 茨城・古河でオールロケ
江戸時代後期の蘭学者で、古河藩家老だった鷹見泉石(1785~1858年)の晩年を描いた映画「SENSEKI」の製作が茨城県古河市内で始まった。撮影の様子が3日、報道陣に公開された。2022年に亡くなった同市出身の俳優、渡辺徹さんが所属した「文学座」と地元有志、芸能事務所「ホリプロ」が全面協力し、市内で全て撮影するオールロケが行われている。映画は来春公開を目指す。
泉石(本名・忠常)は、1831年に古河藩家老となり、藩主の土井利位が大坂城代に就いた際には大坂に赴任。37年に大坂で起きた「大塩平八郎の乱」では、平八郎の探索と捕縛に当たった。その後、利位の老中就任とともに江戸勤務となり、幕府の天文方やオランダ通詞、多くの蘭学者と交流を深めた。
映画は、コロナ禍で文学座の舞台が制限される中、「何かできないか」と渡辺さんらによる構想が持ち上がった。泉石が古河で隠居生活を始めた46年から73歳で死去するまでの13年間にスポットを当て、今月1日から29日まで古河市内で全ての撮影が行われる。今夏には市民を対象に試写会を開き、来年3月初旬までに全国公開を目指す。
渡辺さんの16期先輩で文学座のたかお鷹さん(75)が泉石を演じ、渡辺さんの妻、榊原郁恵さんと長男の裕太さんらも出演する。3日は泉石が自宅の土間でカステラを焼くシーンや和室でコーヒーを飲むシーンなどが鷹見泉石記念館で撮影された。たかお鷹さんは「まずは市民に見ていただき、古河の魅力を再発見してほしい」と話した。
映画には郷土料理のフナの甘露煮やしもつかれなどのほか、古河神楽なども登場する。市観光協会の渡辺勉会長は「古河市民でも鷹見泉石を知らない人が多いので、認知度を高めたい。観光PRにもつながる」と期待する。
映画製作費は5千万円で、これまでに約2500万円が地元企業や個人から集まっている。出資金は1口10万円。今後、個人向けに少額のクラウドファンディングを立ち上げ、寄付を募る予定。出資金や寄付の問い合わせは市観光協会(電)0280(23)1266。