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震災、コロナ禍…100万人運ぶ 真岡線SL 苦楽30年 乗客掘り起こしへ 茨城-栃木

筑波山を背に白煙を上げて走る真岡線のSL=筑西市菅谷
筑波山を背に白煙を上げて走る真岡線のSL=筑西市菅谷


茨城県筑西市と栃木県真岡市を結ぶ真岡鉄道真岡線の蒸気機関車(SL)が3月、運行30周年を迎える。東日本大震災やコロナ禍にあえぎながらも、延べ100万人以上の観光客を運ぶなど苦楽のレールをたどってきた。「茨城を走る唯一のSL」として、乗客の掘り起こしに力を入れる。

週末の下館駅(筑西市)を定刻に出発したSLは、筑波山を背に白煙を上げて疾走。客車は親子連れでにぎわっていた。

「復活の兆し」。真岡鉄道の竹前直総務主任(30)には、コロナ禍を乗り越えた高揚感があった。

乗客数は年3万~4万人だったが、感染拡大した20年度は8500人に激減。東日本大震災で一時運休した11年度の2万7000人を大幅に下回った。どん底にあった客足は戻りつつあり、本年度は「冬が良ければ3万人に届く」とみる。

追い風も吹く。栃木県宇都宮市と栃木県芳賀町を結ぶ次世代型路面電車(LRT)が昨年夏に開業。その乗客がSLにも乗る相乗効果が出ているという。竹前さんは「かなりの恩恵」と喜ぶ。



下館-茂木間の17駅(41.9キロ)を結ぶ真岡線は、沿線自治体などの第三セクター方式で運営する。

「SLもおか」は福島県に保存されていたC12形を復元。1994年3月、土日祝日を中心に運行を始めた。98年には新潟県からC11形が加わり、2台体制で大型連休などにも対応してきた。

一方で重荷となったのが維持費。真岡線SL運行協議会を構成する筑西市など沿線自治体が負担する。

協議会によると、6年に1度の「全般検査」は大規模な分解・修繕を伴い、1台当たり1億5000万円がかかる。かつては交換部品を別のSLから調達したが、活用し尽くしたことで注文生産となった。検査も厳格化し、費用は当初の約2倍にふくらんだ。

このため、C11形は2020年、栃木県の日光・鬼怒川でSLを運行する東武鉄道に譲渡。1台体制となったことで、運行は年間110日から90日ほどに短縮した。次回の全般検査は25年度以降で、半年以上の完全運休が見込まれる。



現在、SLを定期運行する鉄道会社は国内に9社。真岡鉄道や東武鉄道、秩父鉄道、JR東日本の関東4社が占める。東京から誘客しやすいためだ。

ただ、コロナ禍を機に近隣観光のマイクロツーリズムが見直され、地域での需要の掘り起こしが重視されている。協議会事務局の間宵嘉明さん(43)は「まずは茨城の県西県南をメインにPRしたい」と話す。

20年に導入したSLのインターネット予約から顧客を分析したところ、都道府県別の在住地は茨城県が最多の4割弱。その多くは県西地域に集中し、県内誘客の余地は多いという。

協議会は昨年、同県つくば市内でPRイベントを開き、抽選会でSLの無料整理券や沿線の特産物を景品としてアピールした。今年も開催する方針だ。

「茨城県内を走る唯一のSL。興味がある人はたくさんいる」と間宵さん。30周年の節目、SLの運行維持と魅力の発信に一層努める。



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