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仏像修復、未来へ継承 繊細作業、価値取り戻す 茨城・神栖、伊谷・青野さん夫妻

仏像修復に当たる伊谷勇哉さん(左)と青野真澄さん=神栖市内
仏像修復に当たる伊谷勇哉さん(左)と青野真澄さん=神栖市内


茨城県神栖市内に工房を持つ伊谷勇哉さん(36)と青野真澄さん(35)の夫妻は、全国に100人程度しかいないといわれる「仏像修復師」として活動する。2人は製作された当時に思いをはせながら、繊細な手作業で損傷した一体一体を丁寧に修復し、地域の宝を現代、さらには未来につなげる役割を担う。「修復して終わりではなく、再び多くの人の目に触れる仏像になってほしい」との願いを込める。

2人は大学入学前の浪人時代に知り合い、その後ともに進んだ東京芸術大大学院時代の2018年に一般社団法人「仏像修復舎」を立ち上げた。修了後の19年、青野さんのふるさとである同市を拠点に本格的な活動を始めた。

いったん手や脚など部材ごとに分解し、傷み具合を確認した上でクリーニング。塗膜を取り除き、虫食いの穴に薬を入れ、樹脂で埋めるなどして補強していく。欠けた部分は新たに作成する。あくまでも当初の形が優先で、塗膜も当時のものであれば除去しない。古びた色に合わせていく作業へと続く。

繊細な手作業の連続で、大きな仏像になると、修復期間は3年以上にもなる。主に伊谷さんが失われた部分を新しく作ったり、解体・組み立てしたいりする工程を担当。青野さんが虫食い穴の充塡(じゅうてん)や色を染める作業が得意だ。

修復の醍醐味(だいごみ)は価値を取り戻し、高められること。以前、岐阜県の寺から預かった仏像は、塗膜を剥がしてみたところ古く、平安時代のものと判明したことがあった。修復後、この仏像は文化財指定がかかる予定という。胴体の中に修復歴が書かれた紙などが入っていることも面白さの一つだ。

作業で最も大切にしているのは、可逆性があるものを使う点だ。自分たちの〝色〟を出すことはできない。伊谷さんは「(自分たちの)作品ではない」とし、除去が可能な状態にしておくのが重要と強調する。修復後、どう直したかが分かる報告書を依頼者に提出する。当時製作を依頼した人の気持ちや、直そうと思った人たちの思いに寄り添い、次の時代にバトンタッチできるように心がける。

懸念しているのは廃寺の多さ。檀家(だんか)が減り、継ぐ住職が不在となり、地域の宝として祈りをささげられ続けてきた仏像が消えていく。2人はそんな流れをどうにか食い止めたいと考え、活動に熱が入る。

青野さんは昨年から、潮来市の文化財保護審議会委員を務める。「地域の宝をしっかり残し、観光につながっていければうれしい」と期待を寄せる。



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