衛星データ用い森林伐採確認 JAXAと茨城県、森林総研 新手法、ウェブ公開 行政職員の負担軽減
宇宙航空研究開発機構(JAXA)と茨城県、森林総合研究所(同県つくば市)は20日、人工衛星で陸地を観測する「だいち2号」のデータを活用した森林伐採の検知方法と、データを一元化した「森林クラウド」の利用手引を作成、ウェブで公開した。伐採状況は行政職員が現地で確認しており、作業の省力化が期待される。
自治体職員は、森林法の規定により、提出された「伐採届」に基づき、実際に適切に伐採が行われているかを現地で確認する必要がある。しかし人手不足などで負担となっている。
だいち2号には高性能のレーダーが搭載。JAXAによると、日夜問わず観測でき、雲に覆われていても地表面を監視できるのが特徴という。森林計画図や空中写真を共有できる森林クラウドのデータと比較することで、伐採地が抽出される。これにより職員の現地調査の負担が軽減される。JAXAは「衛星データの活用が、行政に広まっていけば」と見据える。
今回公開された手引書は25ページにわたる。伐採検知情報を森林クラウドで利用する手順をはじめ、届け出のない伐採検知箇所の確認の手順などが記されている。大規模な森林がない河内町を除く茨城県内43市町村と県が利用できるほか、林業関係者は一部が閲覧できる。
JAXAと森林総研は2018年に基本協定を締結。21年に茨城県を加えた3者で連携協力認定を締結。14年に打ち上げられただいち2号のデータを活用し、森林伐採の検知技術の検討や精度検証、行政での利用につなげる実証を行ってきた。
森林総研によると、森林クラウドには、森林の所有者や樹木の種類、前回の伐採時期といったさまざまな情報が一元的に管理される。高橋正義チーム長(53)は「行政職員の作業軽減をはじめ、森林管理の一助になれば」と期待する。