食用植物、生き生き描写 茨城県近代美術館で企画展 英王立園が協力
食用となる植物を描いたボタニカル・アート(植物画)の企画展「英国キュー王立植物園 おいしいボタニカル・アート 食を彩る植物のものがたり」が23日、茨城県水戸市千波町の県近代美術館で開幕した。世界屈指のボタニカル・アートを所蔵する英国キュー王立植物園の協力を得て、野菜や果物、ハーブなどを正確性を持って描かれた植物画を紹介。写真ではなく手業による細密描写は、味や匂いを含めた豊かな生命感を伝えている。会期は4月14日まで。
花や植物を緻密に描くボタニカル・アートは、18~19世紀に薬草学や植物学の科学的研究の支援のため、植物を視覚的に記録するツールとして発展。科学的な正確性が求められ、「絵」として鑑賞に堪えうる高い芸術性を備えたものも少なくなかった。
本企画に協力した同植物園は、1841年、ロンドン南西部に開園。18世紀以来の英国王室ゆかりの庭園を備え、世界有数の植物・菌類研究の機能を有する。132ヘクタールの敷地には、3万種以上の植物が植えられ、700万点以上の植物標本のほか、約22万点のボタニカル・アートを所蔵する。
同展は、個人蔵や同植物園のコレクションで構成。カブやキャベツなどの野菜をはじめ、洋ナシやザクロなどの果物、チョコレートの原料となるカカオ、ハーブやスパイスといった植物を題材に、葉脈や実の粒に至るまで緻密な手業で描かれた作品が並ぶ。英国の食文化を伝えるティー・セットや家具も含めて、約190点を展示している。
同植物園キュレーターのリン・パーカー氏は「デジタル写真が普及した現代でも、手による描写は植物学上重要なツールであり続けている。美術表現でも魅力的なボタニカル・アートの数々を楽しんでいただければ」と呼びかけている。