放置船舶、対応に苦慮 那珂川や霞ケ浦 所有者分からず、撤去費も壁 茨城
茨城県内の河川などで長年にわたりプレジャーボートや漁船が放置されている。那珂川や霞ケ浦などで確認されており、中には数十年間置きっぱなしの船舶も。河川増水などで沖合に流されるリスクがあるため早期撤去が望まれるが、所有者が分からないケースもあり実態は不透明。処分費用が高額のため、行政も代執行など強制撤去に踏み出しにくいのが実情だ。
■漁業の障害に
那珂川下流にある漁船の係留所。アユやサケ漁などに使う漁船10隻の近くに、古びたプレジャーボート2隻がひっそりとたたずむ。いずれも長い間使われた形跡がなく、1隻は大きく傾き、船体の半分が陸に乗り上げていた。
那珂川第一漁協の小林益三組合長(85)によると、この2隻は20年ほど前から同じ場所に放置されている。那珂川下流には数十隻のプレジャーボートが不法に係留されているとみられ、数十年前から置かれている船もあるという。
小林組合長は「中には、現在も使われているプレジャーボートがある。マリーナ(の管理費)が高額なので、川に係留しているのだろう」。放置艇は漁網を使う漁の障害になるため、「(河川を管理する)国がどうにかしてほしい」と訴える。
■行政代執行
国土交通省常陸河川国道事務所によると、那珂川下流域は船舶の放置禁止区域。放置艇は洪水や津波で沖に流される可能性があることから、発見した場合は所有者を特定し、マリーナなどへの移動や処分を求めていく手続きに乗り出す決まりだ。
ところが、放置艇に関しては、船舶の登録情報に基づいて書類送付や所有者を訪問しても、所有者が亡くなっていたり、書類上の所有者から「転売した」などと主張されたりして、実際の所有者にたどり着かないケースが多いという。
国や自治体は行政代執行による強制撤去が可能だが、プレジャーボートの処分額は1隻当たり数十万~数百万円に上る可能性がある。処分費用を回収できる見込みは少なく、油が河川に流出するなど緊急事態でない限り、現実的な手段ではないという。
■木製ボートも
こうした放置船舶は河口付近だけでなく、霞ケ浦など内水面でも確認されており、市町村にとっても悩みの種だ。
このうち、霞ケ浦北岸にある小美玉市は2019年度、放置漁船とみられる木製ボート約15隻について行政代執行を実施、計約50万円で廃棄処分にした。所有者はいずれも分からなかったという。
市によると、霞ケ浦北岸の放置艇は比較的数が少なく、木製ボートだったため撤去できたという。
担当者は「もしプレジャーボートだったら、(代執行の)ハードルはかなり上がっただろう」と話した。