児童生徒の盗撮被害、後絶たず 逮捕複数回のケースも 茨城
児童生徒が隠しカメラなどで盗撮被害に遭う事件が後を絶たない。茨城県内では昨年、盗撮や児童ポルノ製造などの事件が相次ぎ発生し、押収された動画などから逮捕が複数回に及ぶケースもあった。性犯罪歴を確認する「日本版DBS」制度が国会で議論される中、専門家からは制度の対象を広い範囲で義務化すべきとの声が上がる。
全国的に相次ぐ盗撮行為に対処するため、撮影罪を規定した「性的姿態撮影処罰法」が施行されたのは昨年7月。撮影データの提供や拡散などにも処罰の対象が広がり、罰則も「3年以上の懲役または300万円以下の罰金」と厳罰化が進んだ。
同法違反容疑(撮影)で県内初の逮捕者が出たのは昨年9月。桜川市や笠間市、境町で学習塾を経営する男(54)=公判中=で、個室トイレに隠しカメラを設置して教え子の児童を盗撮したとされる。男のスマートフォンからは複数の盗撮動画も見つかり、その後も同法違反容疑などで3回にわたって再逮捕された。便器内に小型カメラを複数設置しており、設置場所や動画データの保管状況などから、わいせつ目的があったとみられる。
男は県警の調べに、当初は「水漏れなどを確認するため」「防犯のため」などと容疑を否認。しかし、起訴後には一転して容疑を認め、水戸地裁下妻支部で先月29日開かれた公判では「非常識な行動だった。仕事を変える」と述べた。
男が経営していた学習塾は、全国展開する塾のフランチャイズ校。東京本部では男性講師に対し、女子生徒と直接連絡を取らないなどのルールを設け研修を実施しているというが、担当者は「オーナーが事件を起こすとは」と話した。
同法違反での摘発を巡っては昨年、下妻市のショッピングモール内にあるテナントに侵入して小型カメラを設置した男が逮捕されたり、県央地区の女子中学生に裸の画像を撮影させた男が逮捕されたりした。
■日本版DBS 幅広く義務化を 専門家 「子ども保護が優先」
子どもと接する仕事に就く人の性犯罪歴を確認する「日本版DBS」制度。政府が今国会への提出を目指す法案の骨子案では、学習塾や放課後児童クラブなどは制度への参加が任意の「認定制」としている。性犯罪に詳しい弁護士は「実効性のある制度にするためにも、幅広く義務化するべき」と指摘する。
日本版DBSでは、政府が性犯罪歴をデータベース化したシステムを構築。学校や保育所、幼稚園などでは、全ての就労希望者や現職の職員について性犯罪歴の確認を義務付ける。学習塾や放課後児童クラブ、スポーツクラブなどは任意の「認定制」とする方針。国から認定を受けた事業者は同様の確認が必要となる。
性犯罪に詳しい森田冴子弁護士(茨城県弁護士会犯罪被害者支援委員長)は「性犯罪は再犯率が高い。学習塾やスポーツクラブなども性犯罪歴の確認を義務化すべき」と述べる。
森田弁護士は、加害者の職業選択の自由やプライバシーの尊重は考慮されるべきとしながらも「子どもの保護が優先」と指摘。性犯罪歴のある人に対しては「カウンセリングや他の職業あっせんなどの支援策が考えられる」と述べた。