昨年の台風13号 中小河川は水位急上昇 茨城大報告 久慈川の4倍も
昨年9月の台風13号豪雨災害に関する茨城大の調査チームは15日、日立キャンパス(茨城県日立市中成沢町)で研究成果の中間報告会を開いた。県北地域に被害をもたらした線状降水帯や中小河川に関する調査内容を発表し、新たな技術を活用した防災・減災対策について提案した。
調査チームは昨年10月に発足。土木や防災の研究を行う同大工学部都市システム工学科などの教員を中心に調査を進めてきた。報告会には行政や企業関係者、学生ら約70人が参加した。
小林薫教授は、中小河川の水位上昇の特徴を発表。大雨当日の河川の水位データを分析した結果、国が管理する1級河川の久慈川に比べ、中規模な茂宮川(日立市)の水位上昇速度は約3倍、関根川(高萩市)などは4倍程度速かったとした。小林教授は「中小河川は短時間で氾濫危険水位に達する。大規模河川とは異なる避難行動や避難情報を出すタイミングの検討が必要だ」と述べた。
信岡尚道教授は、豪雨災害への対応として垂直避難の有効性を強調。「止水板」や高い基礎で住宅への浸水を防いだ事例も紹介した。堤防整備や水田貯留などの治水対策は「公園や景観、交流人口の創出などプラスアルファの価値を付けていくことが重要」と語った。
藤田昌史教授は、日立市内の上下水道施設の被害を報告。設備の老朽化が影響し、汚水を流す専用の下水管に大量の雨水が流れ込んだ結果、下水処理場(池の川処理場)に通常の7倍の水が流入し、浸水被害が拡大したとした。
ほかに、仮想現実(VR)を使った水害避難訓練や、土地利用の変化が水の流れに与える影響を調べた研究などが報告された。調査チームは発生から1年を迎える今年9月ごろに最終報告会を開催する方針。